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『サイソウラヴァーズ』江唯みじ子 娘を殺したのは私?自分自身と未来を変えるSFラブストーリー

小林聖

自分を変えたいときに必要なもの

雪也が語った話では、娘の死は蓮の感情的になりやすい性格が原因だった。もともと怒りやすかった蓮は、子育てのストレスで再び感情的になり、夫婦の関係は崩壊していく。そして、その末に娘が死ぬことになってしまったというのだ。

一度は離婚を受け入れようとした蓮だが、雪也の語った未来を変えると宣言し、離婚届を破り捨てる。それは、自分自身の性格を変えることと同じ意味だ。SF的なモチーフを使いながら、『サイソウラヴァーズ』は人の気持ちや感情にフォーカスを当てているのだ。

だが、自分の性格を変えるというのは口で言うよりもずっと難しい。
自分の気持ちなのだから、自分でコントロールできそうなものなのに、実際にはうまくいかない。蓮もまた、わかっているのにいたずらや失敗を繰り返す娘にいらだってしまう。そんななかで蓮は後悔を繰り返しながら、奮闘する。

感情的にならないように必死に自分に言い聞かせる蓮だが、娘の行動に振り回され、ストレスをため込んでいく

物語を読み進めていくなかで気づかされるのは、自分の性格を変えるのは実は自分ではないのかもしれない、ということだ。感情は自分の内側からわいてくるけれど、それを生み出しているのは他人や自分の外側のできごとだ。自分だけしか存在しなければ、感情は生まれない。だから、自分だけで感情をコントロールしようとしても、ストレスが増えるだけでうまくいかない。

自分を変えたいと思うとき、変えてくれるのはきっと他者なのだ。自分の意思ではなく、自分以外の誰かの想いや、誰かを想う気持ちこそが結果的に自分の性格を変えていく。

未来を変えようとする蓮の決意は、どのように運命に響いていくのか

だからこそ『サイソウラヴァーズ』は、「ひとりの女性の物語」ではなく、「家族の物語」なのだ。



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©江唯みじ子/講談社