単行本レビュー
『プラネットガール』大石日々 遠い星から来たパワフル少女との楽しい日常と、秘密の香り
根本和佳
海辺の家、町工場……宇宙船に乗ってきたのは女の子!
宇宙船造船所の技師として働く遠坂砂鉄(とおさか・さてつ)は、15年前に人類が降り立った最遠の惑星「ナズル」で発生した父の遭難事件の真相を探り続けていた。
そんなある日、砂鉄のもとに父親の宇宙船の一部らしき作業船が秘密裏に持ち込まれる。その中にいたのは、宇宙人の女の子・ソラだった……。
大石日々氏の初連載作となる『プラネットガール』は、「月刊!スピリッツ」にて連載中の日常系SFアドベンチャーだ。
父の遭難から15年、ずっと進めずにいた砂鉄の心を、宇宙から降ってきた少女が叩き起こす。造船所で姉のように育ったマキ、父親のような社長とともに、砂鉄は宇宙人の少女ソラを故郷であるナズルへ送り届け、父の事故の原因を解き明かすことを決意する!
たくさん食べるパワフル少女との共同生活!
いっしょに星を見て、潮の香りをかぎ、プリンを食べて、戦隊ヒーローごっこをする。たーーのしーーー!!!!
おにぎり大好き、よく食べるソラ。
すぐ走っていっちゃうソラ。
意思疎通もままならない地球外生命体だけど、太陽のような少女との日常が、たまらなく愛おしい。
小さなソラはどんどん言葉を覚えて、暮らしになじんで……でもそれは、迷子のソラを惑星ナズルに送り届ける日までの、限られた時間なのだ。
ソラは海が好きみたい。
ナズルにも海があるのかな。
もちろん、地球外生命体を隠しておくなど違法中の違法。砂鉄たちはパワフル食いしん坊わんぱく少女を隠し通すことができるのか…? こんなかわいい子、世間がほっとかないよ! 心配だよ!
かわいいにはトゲがある。知ってる。
砂鉄は父親が残していた計画書をもとに、実験用の宇宙船を製作。あらゆる想定で実験をくり返し続けるが、出てくる結果は「安全性に問題はなかった」という証拠ばかり。
宇宙開発管理機構(センター)は、15年前の遭難事件、そしてソラのことについても何かを隠しているようだ。
物語には、父の謎を追い、あえて宇宙環境開発管理機構に就職した砂鉄の兄も登場する。砂鉄とは不仲のようなので、彼との衝突も避けられない。せめてソラ本人のことはかわいがってほしい。管理機構の不穏な動きから、ソラを守ってはくれないだろうか。
ソラの姿が少女であることにも、きっと意味がある。
父親は本当に死んだのか? 管理機構の思惑は? 何者かがソラを地球に送り込んだとすれば、その魂胆は?
かわいいソラに隠された“真実”を、知りたいような、知りたくないような。
父の眠る星・ナズルまで、どのくらいかかるだろう。砂鉄はいつか旅立つはずだ。迷子のソラを送り届けるために、そして15年前の真相を求めて。行かなきゃダメかな……ずっとこのままじゃダメかな……。