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読み切りレビュー

『おくたまのまじょ』丸紅茜 奥多摩に魔女がいる、と思う幸せ

小林聖

魔女はホリデー快速おくたま号でやってくる

魔女、旅に出る。奥多摩から、ホリデー快速おくたま号に乗って。

奥多摩でひっそり暮らしてきた若い魔女・ミナセマホ。魔女たちの期待を背負って彼女は新宿を目指す

本日6月22日から「COMICポラリス」で配信の始まった丸紅 茜(まるべに・あかね)氏の『おくたまのまじょ』はそんなふうに始まる。コミティアなどで活動してきた丸紅氏のデビュー作だ。

上京する少女の不安は「(人間を)殺っていけるかな」

「旅に出る」と書いたが、正確には本作は主人公・ミナセマホが、春からの大学生活に向け奥多摩から新宿へと向かう電車内の物語だ。

ただし、普通の人間の女の子ではない。彼女はかつて人間に恐れられた魔女の末裔。いまや数も減り、奥多摩辺りで細々と暮らす魔女たちの代表として人間に立ち向かうという使命を背負って旅立つのだ。「人間を殺(や)る」という決意と本当に「殺(や)っていけるか」という不安に揺れながら。

心細さで泣き出す少女。だが、目的は人間を殺ること

文字にして説明していくと大変物騒だが、『おくたまのまじょ』はその物騒さと裏腹にとぼけた雰囲気のコメディだ。

たとえば祖母の励ましの言葉を思い出しながら「殺(や)ってみせる!」と決意を新たにする場面がある。
大変恐ろしい決意なのだが、決意している当の本人の表情はむしろキュート。上京の心細さで泣いているごく普通の女の子なのだ。

そんな彼女は電車の中でひとりの人間に声をかけられる。人間の中でも特に恐ろしいと教えられてきた“酔っ払い”にだ。
そして物語は都会や人間に慣れていない魔女と、昼間からべろんべろんの酔っ払いのすれ違う会話劇へと発展していく。

酔っ払いマストダイ。人間の中でも特に恐ろしい彼らに出会った以上殺すしかない



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©丸紅 茜/COMICポラリス