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新連載レビュー

『キャッチャー・イン・ザ・ライム』背川昇 般若、R-指定が監修の百合×ラップな新連載

一ノ瀬謹和

女子高生×フリースタイルバトル!

今、ラップミュージック・ブームが再燃している。

一時期の鎮静感はどこへやら、TV、映画、CMなど様々な媒体にラップミュージックが浸透して、日常生活の中に溢れかえっているのは皆さんご存じの通り。
「ブーム再燃」とは表現したものの、今までにない規模の波が到来していると表現してもいいのではないだろうか。

なかでも、ラッパー同士による即興ラップ勝負・フリースタイルバトルの隆盛は特筆するほど。テレビ朝日のバラエティ番組『フリースタイルダンジョン』がきっかけとなり、ラッパーたちが有する個性豊かなキャラクター性や、そこから垣間見える文化的バックボーン、フリースタイルバトルが持つ知的格闘技としての側面などの様々な魅力が一般層に認知されたことで、多くのフリースタイルバトルファンが発生。今日のラップブームを定着させる礎となったのだ。

何をやってもうまくいかない……鬱屈ネクラ少女・皐月が、運命の出会いを果たす

本日、7月24日発売の「スピリッツ」34号からスタートした新鋭・背川昇氏の初連載『キャッチャー・イン・ザ・ライム』は、そんなラップバトルをテーマにした作品である。
ラップ監修には『フリースタイルダンジョン』に出演する強豪ラッパー・般若氏、R-指定氏を迎えた本格派で、近年徐々に数を増していくラップ漫画の決定版ともなり得る一作なのだ。

……とまあ、そう聞くと、筆者のような軟弱派漫画読みは「ならば当然ギラついたストリートが舞台で、主人公は上昇志向の強い男性ラッパー。まわりには怖そうなお兄ちゃんたちがいっぱい並んでいるような……」と身構えてしまうものの、その予想は大ハズレ。

なんと舞台は花の女子校で、主人公はゆるふわ女子高生3人組、百合百合しい雰囲気の中で行われるラップバトルだというのだから、これはもう驚く以外にないだろう。

百合×ラップ。

一瞥すると、冗談にしか思えないような文字列だが、ラップも漫画も発想の跳躍力こそが命。冗談のようで冗談ではないのだ。

口下手な少女が選んだ部活は……「口喧嘩」部!?

引っ込み思案がコンプレックスである高辻皐月(たかつじ・さつき)は、文武両道を校訓とする沼津女子高校に入学するものの、運動ムリ、楽器ムリ、機械ムリ……という生来の不器用さにより、部活動を決めかねていた。

相談できる友人も作れず途方に暮れていると、校内にて「ラップバトル部」の設立を目指す同級生・天頭杏(てんどう・あんず)南木原蓮(なぎはら・れん)のデモンストレーションバトルを目撃。

突発的に始まった即興バトル! 自らの主張に押韻を織り交ぜ、ショーアップされた「口喧嘩」を見せる杏と蓮

言葉を巧みに操るふたりに魅せられた皐月は、杏と蓮の勧誘を受けラップバトル部へと入部する。不器用でも、口下手でも、ネクラでもOK だという特殊な競技・ラップバトル。果たして皐月の高校生活はこれからどうなっていくのか――。

足を止めてラップバトルに魅入る皐月。憧れの力が運命の扉を開いていく

淡々としたリズムを作り出し、日常漫画を語るのに最適である4コマ漫画のコマ割り、ダイナミックな演出を可能とするストーリー漫画のコマ割りが交錯するという、特殊な表現も本作の見所のひとつだ。テクニカルな演出ながら煩雑さを感じないのは、背川氏が描くキュートな絵柄による安定感も関係しているだろう。

ラップはよくわからない……という人にも安心の解説コーナーもあるぞ!

弱冠22歳という若さで週刊誌の連載を勝ち取った背川昇氏。デビュー作にしてこの実力とは空恐ろしいものがあるが、「スピリッツ」の「即戦力」の活躍を今後も見守っていきたい。



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©背川昇/小学館 週刊スピリッツ連載中