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感情の昂ぶりが花になる花人の優しくて厳しい物語『花落としのいつか』浅見ヒッポ

籠生堅太

自分の心と向かい合うことの厳しさ

体から花を咲かせる体質を持つ「花人(はなびと)」。そんな彼らが普通に存在し、普通の日々を送る世界で、花人専門の医者・花守(はなもり)である鳴沢のもとを訪ねる花人の物語を紡いだオムニバスストーリー。
WEBコミックサイト「アルファポリス」で連載された浅見ヒッポ氏『花落としのいつか』単行本が明日3月27日に発売される。

美しい花を咲かせる花人。彼らの花は「花人卸」として生花店でも人気だ

花人の多くは、心の動きに合わせて花を咲かせる。彼らの花を語ることは、彼らの心を語ることだ。
美しい花の物語は、私達自身も常に抱えている「自分の心と向かい合う」という問題を内包している。それを浅見ヒッポ氏は、優しく、厳しく描いていく。

正体不明の自分の気持ち

花守の仕事はカウンセラーに近い。花が咲かないように抑制剤を処方したり、咲いてしまった花の剪定などの処置も行うが、主な仕事は花を咲かせるに至った心の動きを探ることだ。

花守である鳴沢。彼のもとを訪ねてくる花人は何かしらの問題を抱えている

自分の心だというのに、まるで理解できないという歯がゆさは、私達も花人も変わらない。
むしろ花を咲かせることで、心の一部が人目に晒してしまうのは、さぞ生き辛いことだろう。
心の奥底に追いやって、向かい合いたくもないようなことでも花という形で現れてしまうからだ。

心の問題が花として現れてしまう。美しいけれど、辛い問題だ

『花落としのいつか』では、そうした正体不明の気持ちを「心の闇」や「影の部分」のようには描かない。
自分の気持ちは乗り越えるべき試練でも、倒すべき相手でもない。ただ受け入れるしかない自分自身の一面として描かれる。それは安易な解決を求めるよりも、ずっと厳しい。
だからこそ各エピソードのラスト、自分の心を受け止めたキャラクター達の笑顔は、読者にとって何よりも強い励ましになる。

自分というたった1人の理解者

自分自身を誰かにわかってほしい。そんな願いは、もしかするとないものねだりなのかも知れない。収録されているエピソードのなかでも、「他者からの理解」は難しいものとされる。

心の鏡のようでもある花は、自分を見捨てることはない

結局、自分自身を理解してくれるのは、自分だけなのかもしれない。そんなたったひとりの理解者のことを、私達は大切にできているだろうか。
「ひとりで寂しく、強く生きていこう」なんてことを『花落としのいつか』から感じているわけじゃない。
ただ他人の無理解に涙するよりも前に、まず自分自身の心と向かい合う必要があるんじゃないだろうか。

私達の心は、何があっても花を咲かせることはない。けれど花を愛でるように、自分自身の心を大切にしてあげることは、きっと悪いことじゃない
厳しくて優しい花の物語がそれを教えてくれた。



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©浅見ヒッポ/アルファポリス