明日発売の新刊レビュー
『さめない街の喫茶店』はしゃ 不思議な世界のグルメファンタジー
中山賢司
作る楽しさと味わう喜び、料理はたくさんの素敵に満ちている
美味しいものは、どんな食べ方でも美味しい。
しかし、手間暇をかけて自分の手で料理を作る楽しさ、それを仲間とともに味わう喜びは何物にもかえがたい。
イラストレーター・漫画家として活動する傍ら、同人誌で自身の旅行記や留学体験漫画を発表し続けているはしゃ氏。明日12月13日には、初の単行本『さめない街の喫茶店』が発売される。
夢の中の世界に迷い込んでしまい、そこで働くことになった女の子。住み込みで働くことになったカフェに出入りする人々と彼女が、料理を通じて交流を深めていく姿を描いた本作は、Webメディア「マトグロッソ」で連載された。
単行本には、公開された10話に、描きおろし10話分を加えた全20話が収録されている。
“さめない街”に迷い込んだスズメ
現実世界で眠りに就いたまま、なぜか目がさめなくなった女の子・スズメは、鯨や魔女が空を飛び、巨大な猫が街を闊歩する「さめない街・ルテティア」に迷い込んでしまう。
その一角にある小さな喫茶店・キャトルに住み込みで働くことになったスズメ。持ち前の料理上手の腕を生かし、来客ゼロの日が珍しくないキャトルに人を呼び込もうと、スズメは看板メニューの開発を始める。
ドーナツに始まり、タルトやパウンドケーキのようなお菓子類、軽食としてお馴染みのトーストやクロックムッシュ、そしてお酒のおつまみのパテ・ド・カンパーニュ等々。時に客の手も借りながら、目にも鮮やかなヨーロッパ風の手作り料理を次々に披露していく。
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©はしゃ/イースト・プレス