明日発売の新刊レビュー
『はなまる魔法教室』井上知之 魔女先生が勇気をくれる、やさしい魔法の物語
根本和佳
すごい魔女の先生が、どんくさい僕にはなまるをくれた日
子どものころ、何かを誇れたことがあるだろうか。
大人になっても、自信を持てないまま過ごしていないだろうか。
「裏サンデー」で連載中、明日6月19日に単行本第1集が発売される井上知之氏の初連載作品『はなまる魔法教室』には、そんな私たちのお腹を温め、背中を押してくれる、やさしくてかわいい“魔法”がある。
新学期、担任になったのは「魔女」だった!
若草八起(わかくさ・やおき)は、小学6年生になったばかり。魔法や不思議の本が大好きだが、内向的でどんくさくて、クラスのみんなからもハブられがちだ。
新学期、八起のいる6年2組の担任になったのは、怪しげな魅力を放つ十色魔彩(といろ・まあや)。彼女はこのクラスに、魔法を教えにきたらしいのだが……
マーヤ先生の魔法は、直感的でパワフルだ。
「ガットツカム」は触手のようなものでガッと摑み、「ビュートブ」でビューと飛ぶ。「ミルトゲコル」は、見るとカエルになってしまう。
彼女は出欠をとるたび「ガットツカム」を使用し、生徒たちを席に着かせ、なかば強引に担任として君臨。秀でた魔法能力を持つ子どもを探す一方で、普通の学校の先生をしてみたかったのだと楽しそうに言う。
確かに魔法の教科書は配ったものの、特別な魔法の授業もテストもしない。彼女は魔法を活用しつつも、普通に算数を教えたり、クラスの係を決めたり、遠足のグループを作らせたりしている。
誰もが知る、ありふれた、ときに重苦しい集団生活。八起たちは、あの忌まわしい“小学校の掟”に縛られたままなのだ。
そんなある日、八起はいち早く魔法の力を開花させ、クラスの空気を一変させる。
……しかし。
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©井上知之/小学館