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モノとヒトとの別れ

物語の軸になっているのは、モノがどうヒトと暮らすのかと、避けることのできない別れだ。
モノは壊れる。必要とされなくなったら売られ、捨てられ、いつか必ず主人と別れる。

ホオズキは自分のことも踏まえて言う。

「ヒトにつくられ ヒトに仕え ヒトのために死ぬ 時には主の資金のために売られることもまたモノの宿命だ」

どんな感情を持とうとも、モノはヒトと同列ではない。宝が行う修理は、ただ見た目を取り繕ったり、機能するようにすることじゃない。モノが在るべき場所で役割を果たせるように、心を直すことだ。
そこには、役割を果たしたあとの別れを受け入れさせることも含まれる。

モノに心があったなら、別れたくないと感じるのは必然かもしれないが……

モノとヒトとの共存問題

モノが「捨てられたくない」と願うのは、各々に思い出があるから。
耳の聞こえない少女が持っていた蓄音機は、彼女の家族とともに過ごしてきた日々に幸せを感じていた。だから売られたくない、離れたくない。
確かにそれはモノとして主張されても困る。とはいえ間違いだと断罪するのは酷な話。

宝とホオズキの日常は明るく、全体のタッチはドタバタしている。
しかしモノであるホオズキは時折、やがて訪れるであろう別れの匂いが漂う。
モノが持つセンチメンタルな記憶を描いた物語は、懐かしさを含みつつも誰も見たことがない不思議な背景描写と、よくマッチしている。

命なきモノは役目を終えた時、必ずヒトと別れることになる

ヒトと同等になれないモノは、心を持ったまま共存できるのか。
ありえない話ではない。「AI」という言葉が身近になった現実社会では、すでにモノの人権を問う動きもある。
モノとヒト、どちらかに加担しすぎない宝とホオズキのバランス感が、今後どう描かれていくか見ものだ。



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© Cygames/Nao Sasaki