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新連載レビュー

『マグメル深海水族館』椙下聖海 神秘的な深海の水族館へようこそ!

武川佑

それは怖れと興奮と

空前の深海魚、深海生物ブームである。
2013年、NHKスペシャルで深海で泳ぐダイオウイカが放映された時。
2014年、鳥羽水族館で5年以上も絶食状態のダイオウグソクムシが話題となった時。
記憶に新しい、アイドルグループが幻の深海魚、ラブカを引き揚げた時。
私もその姿に釘づけになった。怖れが半分、興奮が半分。
地球上には、こんな生き物がいるのかと。

知らないことをもっと知りたい。その純粋な思いを人は「好き」という言葉にこめる

椙下聖海(すぎした・きよみ)氏の初連載『マグメル深海水族館』本日6月9日発売「ゴーゴーバンチ」vol.17(新潮社)でスタートした。

深海にある水族館へようこそ

マグメル深海水族館は水深200メートルにある、世界で唯一の深海水族館。
主人公の天城航太郎(てんじょう・こうたろう)は、深海水族館の飼育員になることを夢見る、ちょっと引っ込み思案の青年。今はアルバイトの清掃員としてマグメル深海水族館で働いている。
まずは、海の深淵に住まう生物たちを、じっくりご覧あれ。

ぎょろりとした巨大な目。神話のモンスターのような見慣れぬ姿。宇宙よりはるか近い、たった200メートルほどの深さに彼らはいる

未知の世界へ差す一筋の光

航太郎は、水族館のミナト館長こと、大瀬崎湊人(おせざき・みなと)と出会い、「深海の掃除屋」ダイオウグソクムシにちなんで、「グソクムシくん」というあだ名をもらう。

その見た目から、お客さんに「つまらない、気持ち悪い」と言われてしまうダイオウグソクムシ。
かつて大好きな深海生物をクラスメートに気持ち悪がられて、言い返せなかった苦い思い出をバネに、航太郎は勇気を出してお客さんへ話しかける。

ダイオウグソクムシが5年絶食することがあると知り、気持ち悪がっていたお客さんも驚きとともに、興味をひかれはじめる

ひょっこり現れたミナト館長は、「ダイオウグソクムシは飛べる」とお客さんの前でカウントダウンをはじめる。

つまらないと思うのは、興味がないから。「彼ら」の本当の姿を知らないから。豊富な知識で来館者の心をつかむ館長はエンターテイナーだ

ダイオウグソクムシのある習性を利用して、思いのままに動かす館長。航太郎は、豊かな知識を持つミナト館長に強く惹かれてゆく。

この漫画は、1コマも見逃せない

引用した画像を見てもらえば、お分かりだろう。
ディテールや陰影を緻密に描き込む一方で、ミニ図鑑風のコーナーの深海生物たちは可愛らしい。椙下氏の生物への愛情が画面からビシビシと伝わってくる。

触腕を広げ、水中をたゆたうダイオウイカ。世界で最も大きい無脊椎動物。その目は私たちを映すか

深海生物だけではない。作中の「人間」も表情豊かに描かれ、航太郎と、ミナト館長など「人間」が紡ぐドラマが共鳴する。
深海という未知の世界に、一筋の光を掲げる。それがこの水族館の役目なのかもしれない。

ページをめくれば、読者は「マグメル深海水族館の来館者」になれる。私達は未知の世界を垣間見る――。



試し読みはコチラ!

©椙下聖海/新潮社「ゴーゴーバンチ」