読み切りレビュー
『私の神様』夢野つくし やさしい不条理と愛の在処
川俣綾加
不老不死の神様と輪廻し続ける恋人
「月刊少年ガンガン」2018年4月号に掲載された新進漫画家・夢野つくし氏による読切『私の神様』が、「ガンガンONLINE」にて5月13日まで掲載中だ。
とある田舎の大学生の山城かずさには、秘密がある——。
かずさは少年の姿をした「神様」と共に生活している。その昔、人間の恋人を助けるため理を破り、神の力を奪われ、幼い姿のまま永遠に生き続ける呪いをかけられた、人ならざる存在だ。かずさは神様が背負った呪いを知っており、現代での生活を支え見守っている。
この不思議な関係が表すのは「想いは伝わる」「通じ合う」といった、交差する感情の結果ではなく、並行する感情と愛の在処だ。
※この記事には『私の神様』のネタバレがあります。ネタバレを避けたい方は、下記リンクよりまず作品をお読みください。
ふたりに課された、優しい不条理
数十年ごとに名前を変えながら小説を書き続けている神様を「先生」と呼び、一緒に暮らすため田舎の大学を選んだかずさ。大学を卒業後は村役場の公務員になり、ずっと先生のそばにいると意気込む。
変わらぬ熱情をもち、母親のような献身さで神様を世話をし続けるかずさは、遠い昔、神様が救った恋人の生まれ変わりだ。
だが、神様はそのことを知らない。永遠に知ることのない、かずさだけの秘密だ。
神様は恋人の面影をかずさに垣間見ることはあれど、男女の恋愛には発展することはなく、いつまでもかずさを孫娘のように扱う。
子ども扱いされ不満げなかずさだが、それでも己の素性を明らかにしないのは、「神様をひとりにしないで」と願った彼女もまた呪いにかかっているから。
かずさの魂は、ある時は猫、ある時は鳥、ある時は花として生まれ変わり、神様の傍らにありつづけた。しかし、そのことを誰かに知られれば、呪いは解けてしまう。もちろん神様にも言うことはできない。
神様は、かずさが成長するのをただ見つめるだけ。
かずさは、神様が何度も死ぬ姿を見つめるだけ。
ふたりが並行に歩みながらも愛し続ける物語なのだ。
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©2018 Tsukushi Yumeno/SQUARE ENIX