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ずっと恋をあきらめ続けた3人の10余年『凪子の話』後藤

籠生堅太

「好き」をあきらめ続けた3人の物語

誰かを好きになる。それは人の抱く何より強い感情のひとつだ。
そんな感情を10年以上もあきらめ続けた3人の、あまりにも切ない物語。

左から和也、凪子、浩平。固い友情で結ばれた3人が、それ以上の何かを望むことは罪だったのだろうか

幸せな時間が、優しさが、心に突き刺さる

イラスト投稿サイト・pixivでブックマークを10,000以上集めた後藤氏『凪子の話』が、全ページ加筆修正のうえ、100ページ以上の描きおろしを加えて明日12月23日に発売される。

どこか幼さの残る和也その親友で軽いノリの浩平。そんな2人と凪子の出会いは高校時代。
凪子、和也、浩平3人の10余年の歩みが、凪子の視点から語られる。

ある出来事をきっかけに和也に一目惚れした凪子は、自然と浩平とも親しくなっていく。
同じ大学に進学した3人だったが、その関係に変化が訪れる。和也に恋人ができたのだ。

いつだって想いを伝える機会はあったのにと、涙を流す凪子。
しかし彼女は知ってしまう。浩平も和也のことをずっと想っていたことを。

和也の台詞に隠された想いを、凪子はあとになってから知る

凪子の和也への気持ちは「言えなかった気持ち」から「言えない気持ち」へと変化する。
自分よりも長い時間、自分よりも和也に近い距離で、彼への気持ちを伝えずにいた浩平のことを思えばこそだった。
そうやって「仲良し3人」のままでいることを選んだ凪子を、ある悲劇が襲う――。

浩平の和也への想いを知り、自分の気持ちを押しこめた凪子。
自分だって辛い思いをしているのに、失恋で涙する凪子に優しい言葉をかける浩平。
出会いの瞬間から、凪子が辛いときにはいつだって側にいてあげた和也。

あまりに優しすぎる3人が一緒に過ごした時間は、幸せか不幸せかでいえば、間違いなく幸せな時間だった。
だからこそ、その裏に隠されて、押しこめられて、あきらめられてきた想いが突き刺さる。

「恋人、作らないの?」高校時代、何故か和也に問いかけられなかった凪子。和也の視線の先には……

凪子を襲った悲劇は、3人の関係に劇的な変化をもたらす。
『凪子の話』のラスト、和也が踏みだした一歩がどこに着地するのか。それは描きおろし部分で描かれる。
pixiv版を知る読者も、単行本を手にとってその結末を確かめてほしい。

©後藤 大洋図書 2017