明日発売の新刊レビュー
『ファラ夫』和田洋人 エジプトのファラオが蘇り、国分寺でアパート暮らし
小松良介
現代に蘇った古代エジプトの絶対的(笑いの)王者
東京都国分寺市――。駅前で遺跡発掘をしていた調査団が発見した謎の石棺。中から出てきたのは、何と古代エジプトの君主「ファラオ」だった。
突然動き出したファラオに周囲は騒然。こ、これはまさか日本の首都で『ハムナプトラ』的なアドベンチャーホラーを繰り広げるのか……! と思いきや、そうではないらしい。
ファラオは現代の日本に平然と溶け込み、「ファラ夫」として生活を始めてしまった。
和田洋人(わだ・ひろと)氏が「ヤングマガジン」で連載している『ファラ夫』は、そんな奇怪なキャラクター・ファラ夫の何でもない日常を描いたギャグ漫画。明日、12月6日に単行本1巻が発売される。
魅力的なキャラクターは面白い漫画に必要不可欠
漫画家がインタビューでよく語る言葉に「キャラクターが勝手に動き出す」というものがある。
実際、自分も漫画家たちの取材で何度も同じセリフを聞いた。
キャラクターがある状況下で何を考え、どう動き、その結果何が起きるのか。漫画家の頭の中でしっかりイメージできていれば、キャラクターは自然と物語世界で生き生きと動き出すのだという。
それだけキャラクター設計は漫画にとって重要な作業だ。「キャラクターがすべて」と断言する作家すらいる。編集の現場や漫画の学び舎でもよく語られる教訓だろう。
そういう意味で、本作は「ファラ夫」を生み出した時点でギャグ漫画の面白さが担保されたようなものである。たとえ究極の出オチと言われようが、黄金のマスクをかぶった全身包帯姿の異様なキャラクターが現代の日常にいる、ただそれだけで笑いが生まれるのだ。
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©和田洋人/講談社