明日発売の新刊レビュー
超能力?手品?不穏たのしいショートコメディ『ミラクれ! 微超能力部』藤田まる美
川俣綾加
だいたい手品、たまに本物? ポンコツ高校生たちの超能力の無駄使い
本物の超能力かただの手品か判断に迷う“微ミョー”に不思議なことが起きる部活ライフを描いた、藤田まる美氏のどこか不穏でゆるめなショートコメディ『ミラクれ! 微超能力部』。
「月刊ミステリーボニータ」に毎回6Pずつ掲載され、まだかまだかと言われ続けた単行本が、いよいよ明日12月8日に発売だ。
微ミョーな超能力(?)が使える由利と翻弄される南
どの部活に入るか考えていた南明利(みなみ・あきとし)は、何気なく廊下を歩いていると「微超能力部」と書かれた紙が貼られた扉に気づく。
そこにいたのは自称・超能力者の由利劣(ゆり・おとる)。
彼が使う超能力、それは封が切られていない封筒の中身を(スタンドライトにかざして透かしながら)透視したり、濡れた机の上に熱いお味噌汁のお椀を置いて勝手に動くことだったり、ただの物理的なスプーン曲げだったり……。
超能力なんてものではなく、もはや手品というにもあやしい。ただのうさんくさい人でしかない!
あきれた南はもちろん入部を拒否。
なのに、白紙で鞄に入れていたはずの入部届には、いつの間にか名前もクラスも記入されている。
驚く南に由利は「タイムリープして入部届を書いておいた」。
さらには「胴体切断用の箱を用意した」と無理やり南を箱に入れ、チェーンソーでカット。グロ展開か? と思いきや、なぜか箱と机だけが真っ二つに。
えっ…手品? 手品だとしてもタネも仕掛けもわからない……マジで超能力!?
1話完結型のショートストーリーに、読み手を驚かせる巧妙なテクニックが隠れている。
一度読めば単行本化を待ち望んだファンが多いのも納得だ。
どんな風に不意をついてくるのか、安心できないのに楽しい
謎めいて掴みどころのない由利と、振り回される南のブラックでスピード感ある掛け合いに押し流され、気が付けば不思議な結末に着地する。そのテンポが心地いい。
由利と南の2人に安心感を覚えたと思ったら、ちょっとだけダークなキャラクターが続々登場する。そう、この漫画に安心感などないのだ!
ござる口調で現れたかと思ったら、「由利は織田信長、自分は明智光秀の生まれ変わり」と言いながらポリタンクから液体をまきマッチに火をつける女子生徒、眼帯と両腕の包帯で中二感たっぷりの男子生徒に、普通の女子高生と自称しつつ生霊を飛ばせるマジモンの子。
自称も本物も入り乱れながら、不穏に楽しく進んでいく。
学園生活が一体どんなものかまったく明かされない。舞台は主に部室。ひたすらに微超能力部のメンバーの、危ういギャグが中心。
多種多様なコメディがある中でも、“不穏たのしい”笑いが待っている。
秋田書店 (2016-12-08)
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©藤田まる美(月刊ミステリーボニータ)