明日発売の新刊レビュー
『シークレットコード 不機嫌な暗号探偵』とりこぼ縞屋 隠された想いを過去から未来へ繋ぐ探偵
籠生堅太
若き探偵と幽霊助手が織りなす心温まるミステリ
事件ではなく残された暗号を解き、そこに隠されていた想いを伝える無愛想で、じつは優しい探偵。
そんな探偵が活躍する『シークレットコード 不機嫌な暗号探偵』は、血生臭い事件や、それにまつわる人々の暗い部分が苦手な人にもおすすめしたい心温まるミステリ漫画だ。
「裏サンデー」と「マンガワン」にて配信中の『シークレットコード 不機嫌な暗号探偵』の単行本第1巻が10月12日に発売される。著者のとりこぼ縞屋氏にとっては、本作が初めての連載、初めての単行本となる。
小学館 (2017-10-12)
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過去から未来へ。隠された想いを繋ぐ
千菫生(ちとせ)暗号解読事務所には、どんな暗号も解いてしまう探偵がいる。
残された暗号を解いてもらうため、事務所を訪れる依頼人を目の下の隈を携えた不機嫌な若き探偵・千菫生紺一郎(ちとせ・こんいちろう)と少女と呼ぶにも幼い助手・モモが出迎える。
曾祖母の残した金庫の暗証番号、父から子への試練、かつて別れた恋人に送る隠されたメッセージ、そして今は亡き紺一郎の祖父が知人に託した願い。
作中で解かれる暗号には、すべて過去から現在への想いが込められれている。暗号を解き、そのメッセージを受け取った人間は、新しい一歩を踏み出していく。
『シークレットコード』の読後感は、ミステリ漫画には珍しく暖かいものだ。
「人が死ななきゃ始まらない」とばかりに事務的に殺されてしまう人々や、人から人に向けられる醜い感情といったものはまったく描かれない。
また事件を解決することで、悲しい過去を精算するわけではなく、過去からのメッセージを未来へ繋いでいくストーリーも前向きだ。
とりこぼ氏の柔らかく穏やかなキャラクターたちが、そんなストーリーに一層の暖かさを加えている。
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©とりこぼ縞屋/小学館