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第一次大戦後をひたむきに生きる人々を描く『アルティストは花を踏まない』小日向まるこ

武川佑

コマの外側に世界が生きている

きっとコマの外側にまで、この世界は続いている。
細部まで書き込まれた石畳の町並みや、室内のインテリアには奥行きがあって、まるで当時のモノクロ映画を見るようだ。
さあ第一次大戦後の、フランスの田舎町へゆこう。
第1話の主人公は、ボウリング場で働く少年、モモ・エカルラット
この瞳に、釘付けにならずにはいられない。

美しい線画も本作の魅力のひとつ。服の皺、手先、そして瞳。どれも生き生きと描かれる

小日向まるこ氏の新連載『アルティストは花を踏まない』の第1話が、本日5月17日発売の「ビッグコミック」6月増刊号に掲載された。

あきらめの町であきらめない少年達

第一次大戦後のフランス国境近くの町を舞台にした作品だ。
ストーリーは経営不振にあえぐボウリング場から始まる。そこで働くモモは、お調子者でムードメーカー的少年だ。
ボウリングのピンそっくりな支配人にどやされても、ニカッと笑ういたずら者でもある。

水彩とパステルのような柔らかいタッチで描かれる町並みは、表通りを1本裏に入れば崩れた瓦礫が残り、戦争の爪痕が生々しく残っている。
大人が話すのはよくならない景気や、また戦争が始まるのでは、という話ばかり。
そんな中、ボウリング場が閉鎖になるという報せが舞い込む。

従業員全員のクビを告げる支配人の前で、モモがとった行動とは?

漫画は絵で勝負する、という気迫の2ページ半

ボウリング場の閉鎖をなんとか食い止めようとするモモ達の奮闘が、2ページ半にわたって一切の台詞もなく描かれる。そのシーンをぜひ見てほしい。
だいたいどのコマにもモモがいるが、決して主役ではない。彼が人々を動かしてゆくのが、静かに、けれどのびやかに描かれている。
「マンガは絵で見せる」、という基本的かつ難しいテーマに挑む、作家の誠意と気迫を感じる事ができるはずだ。

人間のほかにラジオやボウリングのピンといった「モノ」の描かれ方にも注目してほしい。
「モノ」を通じてモモから人へ伝わる思いが、実にさりげなく描かれている。

閉鎖寸前のボウリング場のために、町のみんなが立ち上がる。日常に光が差す瞬間だ

日常に光が差す瞬間を。

この作品に完全無欠のヒーローはいない。誰もが普通の「小市民」だ。
善良だけど、時々弱かったり、くじけそうになったりする。

そんな時、モモが「こっちだよ」と光の差す方を教えてくれる。
じんわりと、心がほぐれる読後感を味わってほしい。

表題の『アルティストは花を踏まない』とはどういう意味だろう。
それは郵便配達の娘・リルなど印象的なキャラクターが動く2話以降で明らかにされるだろう。今後の展開が楽しみだ。

連載開始を記念して「ビッグコミック」に掲載された読み切り版『アルティストは花を踏まない』が無料公開中だ。
連載が気になった人は、まず目を通して見てほしい。



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©小日向まるこ/小学館