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コミュ症女子が料理でコミュニケーション『あたりのキッチン!』白乃雪

yomina-hare編集部

想いを伝える手段は言葉だけじゃない

誰かのことを想って作る料理、大切な人と囲む食卓。料理や食事ってコミュニケーションだったのか!
ひとりの食事に慣れてしまって、そんな当たり前のことすら忘れてしまった頭を『あたりのキッチン!』は優しく刺激してくれる。

口下手でも誰かのことを想っていないわけじゃない。料理に込めた想いが伝われば、作った側の心も暖まる

「月刊アフタヌーン」で連載中の白乃雪(しろの・ゆき)氏の初連載『あたりのキッチン!』は、超人的な料理スキルを持つものコミュ症な女子大生が、料理を通じて彼女の周囲の人と交流していくお料理コメディだ。単行本は明日4月21日に発売される。

誰かのために作る料理

匂いをかげば隠し味まで言い当て、ひと口味わえばレシピを事細かに言い当てる。そんな天才的な嗅覚、味覚を持ちながらも人の目をみることすらできないコミュ症の辺清美(あたり・きよみ)。食にまつわる仕事をしつつコミュ症を改善したいと彼女が選んだのが定食屋・阿吽でのアルバイトだった。

料理のこととなると途端にテンションの上がる清美。控えめに言っても天才

清美は幼いころに両親を亡くしており、叔母夫妻のもとで育てられた。多忙な夫妻のために料理をすることで、清美自身が「家族」として認められていると実感することができた。彼女にとってのコミュニケーションとしての料理の原点だ。

阿吽の亭主・中江善次郎(なかえ・ぜんじろう)は妻をなくしたばかり。息子の清正は反抗期まっさかりの高校球児だ。そんな親しい人を亡くした彼女たちが「家族」のようになっていく様子が綴られる。

自分の外側へ向かう食漫画

美味しいものを口にしたときの感動や、食へのこだわりをディープに描いた食漫画が流行している。いわば内面にむかっていくタイプの食漫画が今は主流なのかもしれない。
『あたりのキッチン』は食を通じたコミュニケーション、つまり他人という外側へとむかっていく食漫画だ。それがかえって新鮮に感じられたのかもしれない。

物語の舞台となる阿吽は常連さんに支えられるこじんまりとした店。みそ汁の出汁すら客の好みにあわせて変えるような徹底ぶりだ。善次郎の調理のアドバイスも、清美のアイデアも「お客さんに喜んでもらうには」からスタートして、「美味しいものを作る」へ進んでいく。

友人からの感謝の言葉にオーバーヒートする清美。少しずつ誰かのためにできることの増えていく彼女を追いかける楽しさもある

注文を聞いてくることすらいっぱいいっぱいの清美が、相手のことを想って料理に一手間加える。料理も人間関係も面倒くさい。ちょっと気を抜いたらあっという間にくずれてしまう。
言葉は苦手でも料理ならばと、丁寧に料理をしていく清美の姿は、雑な食生活を送るズボラな読者にはまぶしい。

まだまだ他人との心の距離の詰め方がわからない清美。彼女を支えていく善次郎と清正。
生い立ちからか、他人の家庭に踏み込むことに抵抗が強かった清美だが、少しずつ善次郎と清正との距離は縮まり、ひとつのテーブルで彼らと食事をするほどに。

「誰かのための料理」「大事な人と囲む食卓」当たり前だけど、なかなか触れることのできないものを漫画からいただいて、元気な心の糧にしたい。



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©白乃雪/講談社