明日発売の新刊レビュー
『貝とオルタナロック』なこ ツンツン上司×バンドマン部下の百合恋
川俣綾加
幸せにむかう不器用なふたりの恋
ツンデレ上司×バンドマン部下の百合を描いた『貝とオルタナロック』が明日、6月16日に百合姫コミックスから発売だ。
もとは同人誌として頒布されていた『貝とオルタナロック』は、2015年の夏からスタートし、この春にシリーズが完結。単行本化にあたって、本編修正・加筆がされており、既読の読者にとっても嬉しい一冊だ。
閉じた貝がそっとひらくお話
上司である牧野茜(まきの・あかね)は真面目で厳しく愛想がないからか、会社の年下女子社員からは行き遅れ、口うるさいと陰口を叩かれることもしばしば。対して部下である瀬尾真琴(せお・まこと)はどこか飄々としていてマイペース。
そんなふたりが、ふとしたきっかけで距離を縮めることに。
この作品が、しとしととした雨の日に読みたくなるのは、たぶんそのきっかけが雨だからだろう。
牧野に「ドン引きするほど愛嬌」がないと、ストレートに言ってしまう瀬尾。
牧野はイラつきながらも瀬尾が、自分が本当に欲しかった言葉をかけ、見て欲しい部分に目を向けてくれる存在だと感じるようになっていく。
瀬尾は瀬尾で、「キスして欲しい」と軽く口にしたことを牧野が行動に移してからというものの、ただの上司以上の存在なる。
『貝とオルタナロック』は、心を固く閉ざした牧野と、バンドでギターを奏でる瀬尾のことを表した言葉。
ぎこちなくもどかしいやりとりが、固く閉じた貝をやさしく開くお話だ。
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©なこ/一迅社