特別企画
誰も知らなかった新人賞の裏側を全部見せ! モーニング・ツー×ITAN即日新人賞 その5レポート
籠生堅太
最終選考、はじまる!
いよいよ最終選考がはじまる。新しい才能が発掘される瞬間に立ちあうべく、即日新人賞のブースには多くの人が集まった。
通過率1割以下! ハイレベルな作品たち
最終審査が始まるにあたって、司会を務める「ITAN」編集長・岩間氏より今回の応募総数と最終選考への通過作品数が発表される。
今回の応募総数は116本、最終選考に残ったのは7本とのこと。最終選考への通過率は1割以下という数字に、即日新人賞のレベルの高さを伺うことができる。
※2016年9月18日追記。
記事公開当初「応募総数は116作品、最終選考に残ったのは7名11作品」と記載しておりましたが、同一著者からの複数応募はまとめて「1本」というカウントをしているというが判明いたしましたので、修正いたしました。
ここで気になったのが、116本という応募総数だ。実はこの数字、関西コミティアで開催された即日新人賞その2を除けば、過去最少の投稿作品数である。即日新人賞は、勢いを失ってしまったのか?
そんなことはない。第1回から即日新人賞の観覧を続けている筆者からすれば、むしろ賞自体の勢いは回を重ねるごとに増していっている。“開催当日、同人誌でも投稿できる”という参加ハードルの低さも即日新人賞の魅力のひとつだ。しかし過去4回の即日新人賞での編集者の熱い討論や、デビューをはたした先輩漫画家たちの活躍もあり、この新人賞に記念受験的な気持ちで挑むべきではないと考える新人が増えたのではないだろうか。
見ているのは、作品ではなく作家
ひとつひとつの作品について「モーニング・ツー」「ITAN」それぞれの審査員が講評をのべ、ときに議論を繰りひろげる。
女性向け、青年向けという媒体の違いからくる意見の違いもあれば、同じ編集部のなかでの意見が別れることもある。そうした場面を目の当たりにすると、漫画の持つ可能性の広さを感じることができる。
講評を聞いていて、気付いたことがひとつある。両編集部とも作品の講評はもちろんだが、作者自身についての発言が目立つ。
「作品に説得力を持たせるための描きこみは、やりすぎるとうるさくなる。この作家さんは、そうならないための引き算がうまい」
「キャラクターの表情が豊か。表情に興味がある人は、人の心に興味がある」
「頑張っているけれど、ひとりよがりじゃない。健やかさを感じる」
考えてみれば当然だ。編集者にとってみれば、賞を与えた投稿者とは、場合によっては10年以上の長い付き合いになる。今、目の前にある作品の良し悪しも重要だが、それ以上にこれから先、どのような作品を投稿者と作っていくかこそ、編集者が見ているポイントなのではないだろうか。
作品だけではなく、そこから透けて見える作家自身を考える。それがわれわれ読者と編集者の漫画を見る視点の大きな違いなのかもしれない。
そして1時間にわたる審査をへて、ついに大賞が決定する!
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モーニング・ツー×ITAN即日新人賞を制したのは?
取材・撮影:yomina-hare編集部
取材協力:コミティア実行委員会