特別企画
即日新人賞は、二度審査される? 「モーニング・ツー」「ITAN」編集部を直撃!
籠生堅太
どんな雑誌が主催しているのか?
8月21日に開催されたコミティア117内で行われたまったく新しい漫画新人賞、モーニング・ツー×ITAN即日新人賞。yomina-hareでも当日の様子を記したレポートが好評配信中だ。
新人賞の裏側を全部見せ! モーニング・ツー×ITAN即日新人賞レポート
イベント終了後、講談社を訪れ、当日審査委員長を務めた「モーニング・ツー」編集長・寺山晃司氏と「ITAN」副編集長・冨澤絵美氏のおふたりにお話を伺った。
そもそも「モーニング・ツー」「ITAN」とはどんな雑誌なのか? なぜ即日新人賞はスタートしたのか? どんなことを思い、作品を見ているのか?
「モーニング」にイライラして生まれた雑誌
本日は、青年誌である「モーニング・ツー」、女性誌である「ITAN」がなぜ合同で新人賞を行なうことになったのかなどについて、お話を伺っていければと思います。まずはそれぞれの雑誌の特色をお教えいただきたいのですが。
読者はだいたいのイメージですけれど、20代から40代で男女は半々ぐらい。いわゆる普通の週刊誌、それこそ「モーニング」なんかを読んでいる方に比べれば、やはり「漫画好き」と言われる人が多いですね。
「モーニング・ツー」は「モーニング」の増刊としてスタートしたわけですが、どういった成り立ちで。
イライラ!?
歴史があるがゆえに。
それで初代編集長である怒りの人・島田が立ち上げたのが「モーニング・ツー」です。
「モーニング・ツー」は即日新人賞のPR動画での「闇鍋のような雑誌」や、今回の「モーニングにイライラして出来た雑誌」など、キャッチフレーズが印象的ですね。
編集者の野心から生まれた「ITAN」
そんな“闇鍋”な「モーニング・ツー」に対して「ITAN」はどのような雑誌なのでしょうか。PR動画では、雑誌の特徴を「カラーに縛られない」と紹介したり、ある意味「モーニング・ツー」の“闇鍋”に通じるものがあり、青年誌と女性誌という違いはありつつも、共通する部分が多いように感じますが。
「BE・LOVE」という雑誌を作っている編集部が手掛けるもうひとつの雑誌なのですが、「BE・LOVE」も「モーニング」同様に、歴史のある雑誌で、作家さんもベテランの方が第一線で活躍されていて、すごく読者さんの信頼が厚いんですね。そんな雑誌と読者が相思相愛のなかに、すぐには入っていけないジャンルもあって。
でも編集者っていうのは、読者に対して「今、こんな面白いものができている」というのを伝えたい欲求がある生きものだと思うんです。そこを果敢にせめていく、自分が面白いと思ったもは、ぜったい読者にとっても面白いはずだという信念と野心のもとに動きだした雑誌です。
創刊から5年以上経過しましたが、手ごたえは?
「モーニング・ツー」「ITAN」それぞれから見るお互いの姿
部外者としては、両誌は非常に共通する部分があると感じるのですが、実際のところ、どのようにお互いを感じていらっしゃいますか。
まさに“闇鍋”感。
僕、「ITAN」の作品大好きなんで(笑)。『昭和元禄落語心中』とか、死ぬほど好きです。
意外すぎる誕生秘話
お話を聞けば聞くほど「モーニング・ツー」「ITAN」の両誌には、共通点が多いように感じます。そんな2誌だからこそ、合同で新人賞をやろうということになったのでしょうか。
え、そんな軽いノリからスタートしたんですか(笑)。
なんというか意外すぎる経緯ですね。でも第1回即日新人賞の告知ページ、たしかに両誌の編集長のコメントがノリノリなんですよ。合点がいきました。
やはり、漫画雑誌というものはどこかでバカでなければいけない。
「なんだこれ!」「バカだなこいつら!」って思われたいしそういう気持ちから新しいモノは生まれると思います。モーニング・ツー編集長(当時):モーツー×ITAN 即日新人賞 @ COMITIA103|講談社
当日にならないとどうなるのかわからないのですが、やはり『モーニング・ツー』と『ITAN』とで新人さんをバチバチ取り合うというのは・・・・・・ あってほしいですね。
お互いなにがなんでも譲らない、みたいな(笑)。ITAN編集長:モーツー×ITAN 即日新人賞 @ COMITIA103|講談社
読者感覚に一番近い新人賞
そんなお祭り感覚でスタートした即日新人賞ですが、毎回白熱した内容となっています。いろいろと通常の新人賞とは異なる点もあるかと思うのですが、おふたりはどのような気持ちで選考に臨まれていますか?
編集者は当然、漫画をとても丁寧に読みます。漫画好きですし、漫画家さんのことも尊敬しているので。でも読者の方は、気楽にマンガを読むと思うんですよ。あればパラパラめくる。マンガってそういうものですし。
その感覚に多分一番近いのが、100作品以上を3時間で読まなきゃいけない即日新人賞。僕は読んでいるときに気にしているのは1点だけで、面白いかどうか。
逆に言えば、投稿するってことは、漫画家になるためのドアを叩く一歩なので、その作品の最初の線を荒く描くっていうのは、切なすぎるって思っちゃうんですよね。
当日、講評シートを見ていて感じたんですが、「◎、◯、△」という三段階評価で、◎が出やすい編集者や、△ばかりの編集者などの評価のバラつきがあるような。
厳しさと優しさをあわせもつ選考
「ITAN」大賞 『魔女と怪物』吉村あまぐ https://t.co/5NuY2lBhlo
— yomina-hare(よみなはれ) (@yomina_hare) 2016年8月29日
ほかの審査員には才能を感じたから、それは背中を押してあげるべきだと考える人もいて。それも正しいと思います。
その両方の視点が同時に存在するのも即日新人賞の特色かもしれないですね。
当日、会場とは別に審査が行われているということですか。
たしか『アニメタ!』の花村さんは、当時受賞はされなかったけれど、デビューされたんですもんね。
私、商業でも活躍されているある作家さんの同人誌を見せて頂く機会があって。いつもより絵が荒いなと感じたものは、本人に聞くとやっぱり寝ずに描いたりしたものだということもあって。
でもその人の作品だと思ってみると、たしかに素敵な片鱗があるんですよね。その片鱗を探っていく、化石掘りみたいなのは、2回目の読みですね。
新人の爆発力を見せてほしい
漫画家を志す人にとって、即日新人賞はアマチュアからプロになるためのの場所として、大きなチャンスであるものの、当然ですが、そこには厳しい目あるんだなというのを感じています。
ちなみに寺山さんはどこにプロとアマの境目があると。
私たち編集者は会社員なので、ずっとひとりの作家に寄り添ってことができないのです。
そういう立場からすると、私は担当している作家さんに60になってもペンを持っている姿を想像できる手助けができるように、隣にいたいですね。
即売会やpixivで編集者が新人をスカウトをしたり、作家さんが自分で世に作品を世に発表したり“漫画家になる方法”が多様化したなかで、新人賞にチャレンジするメリットとは。
漫画で食べていくという決意表明のための、新人賞。
毎回投稿していれば、前回からどれくらいの時間で描いたかもわかるわけですしね。
まさに新人の爆発力という感じですね。
新人さんが雑誌の表4を飾ることは珍しいんですけれど、“新人さんとやっていく”っていう決意表明ですよね。
yomina-hareもそうした新人漫画家の方たちを、世の中の人達にみつけてもらうきっかけになればなと思ってスタートしたので、「モーニング・ツー」「ITAN」両誌には、今後ともご協力いただく機会あるかと思います。本日は、ありがとうございました。
取材・撮影:yomina-hare編集部
今回のゲスト
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寺山晃司
「モーニング・ツー」編集長
モーニング・ツー編集長
2009年講談社入社。入社後は「週刊現代」編集部に配属。2012年に「モーニング」編集部へ移動。2016年6月より「モーニング・ツー」編集長に就任。
「モーニング・ツー」で連載が開始したばかりの白浜鴎氏『とんがり帽子のアトリエ』や、「モーニング」で連載中の村田雄介氏『マンガ家 夜食研究所』、原案・虚淵玄氏、漫画佐久間結衣氏の『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』、藤本正二氏『終電ちゃん』などを担当。
講談社入社以前からコミティア会場に通い続けるコミティアフリーク。 -
冨澤絵美
ITAN副編集長
2002年入社以来「BE・LOVE」編集部に在籍。
「ちはやふる」や「昭和元禄落語心中」などを担当。当時、無名だった田中相氏を「ITAN」創刊時の執筆陣に抜擢する。
田中氏の新連載、謎の奇病・眠り病をめぐるSFアクションファンタジー『LINBO THE KING(リンボ・ザ・キング)』をよろしくお願いします。