明日発売の新刊レビュー
『ほとんど路上生活』川路智代 DV父から逃げた先は扉のない宴会場
川俣綾加
これが現実の出来事!? 驚愕のコミックエッセイ
父親からの「昼逃げ」と、そこから始まる混沌混迷の生活を描いた川路智代氏の実録漫画『ほとんど路上生活』が明日6月2日に発売する。
同作で描かれるのは、著者の中学生時代の生活。
パチンコに明け暮れ、家族に暴力をふるう父・クマ造から逃れるため、母・のばら、兄・大和、著者、そして妹・みんげつの4人は夜逃げならぬ昼逃げを敢行する。
人と荷物を車に詰め込み行き着いた先は、のばらの兄が営業する魚屋。そのはなれである、今はほとんど使われなくなった宴会場に身を寄せることになった4人だが、そこは風呂もキッチンも──そして扉さえもない道路に面した建物だったのだ。
壮絶に壮絶を上塗りしていく数多のエピソード
これは驚きのエピソードの序章に過ぎない。宴会場に突如として現れた「羽交い締めおじさん」や寝ている著者に尿をかける「聖水おじさん」をはじめとする謎のおじさんたち、兄にストーカーする女生徒……。
父親から逃れても、落ち着きを取り戻した状態とはいえない毎日が続く。
しかし、昼逃げをする以前の生活はこれより過酷だ。
祖父の会社の破産と、曽祖父が亡くなったことで発生した遺産相続争い、家族に対する父・クマ造の容赦のない暴力。そして、昼逃げと、そのきっかけとなった祖母の自殺。
のばらと大和はこの家を出るべく話し合いを進める。
……どれだけのエピソードをつめこむ気なのだろうか!?
正確には「つめこむ」ではなく実際に起きた出来事をまとめているだけなのだが、それをわかっていても、この漫画を読んでいると驚き続けることになる。
「まだある!?」「さらにこんな出来事が!?」と驚きの繰り返しなのだ。
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©川路智代/エブリスタ/小学館クリエイティブ