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『カメントツの漫画ならず道』レジェンド漫画家と真っ向勝負のルポ漫画

根本和佳

あだち充・青山剛昌・西原理恵子……ネットニュースを騒がせた話題作

仮面の男が漫画界を斬る!? 「オモコロ」などWEBメディアで作品を発表してきたカメントツ氏の初単行本が発売される。「ゲッサン」で連載中の“漫画ルポ漫画”『カメントツの漫画ならず道』だ。

漫画界の至宝・あだち充氏に対して、どストレートを投げ込む! コントロールはきかない!

業界を斬るけど、業界から切られるかもしれないルポ漫画

一目でわかる、忘れられない絵。彫刻刀で削りだしたような線。名前の通り、奇妙な仮面をかぶり、様々な場所を訪ね、聞きづらいこともズケズケと切り込んでいく。
WEBメディアでのルポ漫画で話題をさらってきたカメントツ氏が、紙媒体の漫画雑誌「ゲッサン」での連載にあたって選んだのは「漫画をルポする漫画」だ。

漫画界のレジェンド・あだち充氏、青山剛昌氏、西原理恵子氏、のむらしんぼ氏、さらに印刷所や製本所など……漫画に関わる人々のフトコロへ、あらゆる方向から飛び込んでゆく。

青山剛昌氏には「漫画界で登場人物を一番殺している」と追及!(後ろで薄くなっているのが担当の☆野氏)

のむらしんぼ氏には「へりくだるのもいいかげんにしてください」と言い放ち、ゲッサン編集長を「豆」と呼ぶ。なかなかにアグレッシブである。
一方で、製版所や印刷所ではプロの技に目を輝かせインタビューする。仮面の漫画家は、表情豊かだ。

この作品はさまざまな相手を取材するためか、一定のスタイルにおさまらない。なのにカメントツ氏のルポ漫画は、いつも読ませる力に満ちている。テンションの高さか、鋭いツッコミの力か。
その理由は、著者自身の姿にもある気がしている。

「仮面」がもたらす過激さと、静かな間合い

ルポ漫画というのは、ドキュメンタリー映像とは少し異なる。
漫画家自身の手ですべてを描いている以上、描きだす内容の取捨選択のみならず、登場人物の熱量も、表情を描く一本の線までも著者の自由にできる。だから、著者の人となりが現れている。

「空気を読まない発言で、流れを作っていく」
「聞きづらいことに、鋭く切り込む」

カメントツ氏にはこういった特徴もあるが、魅力はそれだけではない。

漫画に関わる人々への熱意や敬意はもちろんだが、氏の作品から強く感じるのは、ある意味で力の抜けた、静かで真摯な姿勢だ。目の前に広がる見知らぬ世界へ「身をまかせる」という表現が似合う、いわば明鏡止水の境地。そうした一歩引いて見つめるための装置が「仮面」なのかもしれない。

自宅で立ったままお酒を飲むという西原理恵子氏。ちなみにカメントツ氏は仮面のまま飲める

カメントツ氏の仮面は、キャラづけと過激さを演出する「覆面」の役割だけでなく、世界から一枚隔てた、一段ずらした位置に立てる「間合い」の役割も果たしているのではないだろうか。
注目を浴び評価されるルポ漫画は、仮面の向こう側から静かに生み出されていると感じた。

もうひとつ。
断食道場、腸内洗浄、自己啓発セミナー、添い寝カフェなど、世の中のあれやこれやに飛び込んでいく「オモコロ」連載作『カメントツのルポ漫画地獄』全1巻も同時発売される。こちらではカメントツ氏の、高飛び込み台から無重力落下するような「身を投じる」姿が見られるはずだ。



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©カメントツ/小学館