明日発売の新刊レビュー
『ましろくんは世話をやきたいっ!』笹目ゆきち 世話やき男子は、ありがたいけど少し迷惑
根本和佳
世話をやかれてると思ってたら、世話をやいていたんだ
そんな真白くんを必要としている人もいる。
不良っぽい桃川は、真白くんのお世話を効果的に利用しつつ暮らす。手のかかる彼は、真白くんにもっとも好かれている存在かもしれない。
「桃川を甘やかしすぎではないか」……そう感じる読者もいるだろう。
だが違うのだ。甘やかしてこそ、真白くんには世話をやくチャンスが生まれる。これぞ真白メソッド。
いっぽうクラス委員の金森さんは、なんでもこなす優等生。
真白くんにとっては、完璧すぎてお世話できない、苦手な存在だ。ほんとは真白くんと仲良くなりたいのに、お世話フラグを自然に折ってしまう金森さん、かわいいぞ。
真白くんは、数多くの才能を備えている。
・困っている人をフルパワーで助ける行動力(ためらいはゼロだ)。
・お世話を必要としている人を見抜く眼力(出番がないとしょんぼりしちゃう)。
・あらゆるピンチに対応できる完璧な準備(女子生徒の制服まで用意している)。
だがそんな彼でも自分で自分のお世話はできない。
私たちが漫画を読んだり映画を観たりして感情を動かされるように、人は何かに触れることで力をもらい、自分が生きているという実感を得られる。
つまり真白くんが、世話をやくという行為に喜びを見いだせるのは、まわりの人々が世話をやかせてくれる状況があってこそだ。
ならば真白くん「に」世話をやかれている状況は、真白くん「の」世話をやいている状況でもあるのではないだろうか。
そう思うと「真白くんに世話をやかせたい」気持ちが芽生えてくる。これか、これが愛か。
世話やき男子は、じつは誰よりも世話のやけるやつでした。
講談社 (2017-12-15)
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©笹目ゆきち/講談社