明日発売の新刊レビュー
『たば子ちゃん』ひみつ 喫煙所にくゆるタバコ少女と、密かなおしゃべり
たまごまご
愛煙家だけが知っている、彼女たちの儚い魅力
「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります」……とタバコのパッケージに警告表示が書かれるようになって久しい。誰もが身体に悪いと分かっているのに、それでも吸ってしまう人がいる。なぜなんだろう?
「別冊ヤングチャンピオン」で連載中のひみつ氏による、ちょっと色っぽいオムニバス喫煙コメディ『たば子ちゃん』単行本第1巻が明日11月20日に発売される。
ひみつ氏は、デビューから2年たらずで『ぺたがーる』『担当編集ボツ子さん』など精力的に作品を発表しつづける注目の新人漫画家だ。
秋田書店 (2017-11-20)
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タバコを吸う、ちょっと間だけ会えるあの子
会社員3年目。日々仕事に忙殺される浅野。まわりからはマジメで働き者だと思われ、新しいジョブも増えた。でも本人はいつも不安。ストレスはたまる一方。
疲れると、喫煙室でタバコをふかす。自然と回数も増えてくる。
タバコを吸うと出てくるのが、ワイシャツ一枚の少女・たば子ちゃん(正式名は不明)。人のいない喫煙室での、浅野の話し相手だ。
浅野は仕事の愚痴をたば子にこぼす。もっともたば子はアドバイスなんてできない。
「タバコに何を求めてるんですか? 吸っただけで問題が解決するなら みんなタバコを吸っていますよ?」
でもたば子に悩みを吐き出すことで、浅野はちょっとだけスッキリできる。だから彼はタバコがやめられない。
できれば吸わない方がいい
分煙は徹底され、路上喫煙は禁止。
タバコを吸う幸せを題材にしつつも、決して奨励はしておらず、吸うべきではないという理念はベースにある。
たば子たちを通して、働く大人のブルースにスポットを当てようとするバランスが絶妙だ。
浅野をはじめとする愛煙家たちは、別にタバコ少女たちに会いたいと思っているわけではない。燃え尽きるまでのほんの一瞬に現れる彼女たちと、なんとなく語らうだけだ。
だから一本吸い終わって彼女たちが消えるときも、一切後腐れがない。あくまでも気分転換なのだ。
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©ひみつ(秋田書店)2017