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『愛を見せろ』ふしみあみ 「誰か」をなくした不器用な3人の愛は

武川佑

「誰か」を求める3人のストーリー

ほほえましくユーモラスな展開に油断してると、後ろから刺されるような。まばたきしないで、読んで欲しい。

問題児が引っ越した先のアパート。その階下の住人は先生だった。そこへ先生の息子がたずねてきて……

ふしみあみ氏が描くヒューマンドラマ『愛を見せろ』の第1話が、「COMIC it」に掲載されている。

母親とふたり、アパートに引っ越してきた女子中学生・槙村七海(まきむら・なみ)
下の階の住人を訪ねたところ、教師の長川(ながかわ)と、彼を訪ねてきた別居中の息子・けんたに会う。

父親に捨てられた少女。妻子と別れた男。父を求める少年。
「誰か」をなくし、悲しさや孤独をかかえる3人のストーリーが交錯する。

あたしたちは強くなんなきゃ

出てくる人物はみんな、いわゆる美男美女ではない。
そばかす顔の七海はボーイッシュな雰囲気だし、三白眼の長川は好きな人にはたまらないほどの人相の悪さ。けんたは同級生に比べると、ずいぶん幼い顔だちをしている。
凸凹の3人が少しずつあらわにする感情が、読み手にボディーブローのように効いてくる。

職場から急に呼び出された長川のかわりに、七海はけんたを面倒を一時的にみることに。
父である長川と離れて暮らすけんたは、気が弱く、両親の離婚のことで学校でいじめられている。
七海がけんたに伝える言葉は、作品の核心をついているように思う。

「あたしのママはね 一人でなんでもできるようになんなさいってよく言ってたの」
「 …わかる? 強くなんなきゃダメなんだよ」

七海の力強い言葉が胸を打つ。

誰かを守るときがくる。けんたの心に変化をもたらす言葉だ。同時に読み手の心にも響く

セリフは多くない。だからこそ人物の目線、ちょっとした仕草が大きな意味を持つ。
たとえば風呂場で七海があひるのおもちゃを持って「ふ~ん…」と呟くコマ。
無愛想な長川の息子への隠れた愛情が示される。七海の表情に軽蔑とも羨望ともとれる感情が見えるような気がする。
「愛」のかたちがテンポよく、あざやかに表現されたシーンだろう。

「愛されてなかった」だから強くならなければいけない。ひとりでも大丈夫なように



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繰りだされる感情のパンチに打たれろ & 第1話を読む


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©Ami Fushimi/KADOKAWA 2017