1. PR

    作家インタビュー

    『剥き出しの白鳥』鳩胸つるんインタビュー 「『ToLOVEる』よりも裸」から白鳥くんは生まれた

    籠生堅太

  2. PR

    明日発売の新刊レビュー

    『剥き出しの白鳥(はくちょう)』鳩胸つるん 異端の「露出狂」漫画は、王道少年漫画だ!

    籠生堅太

  3. PR

    新連載レビュー

    『キャッチャー・イン・ザ・ライム』背川昇 般若、R-指定が監修の百合×ラップな新連載

    一ノ瀬謹和

  4. PR

    明日発売の新刊レビュー

    『ブルーピリオド』山口つばさ 才能にノウハウで立ち向かう美大受験物語

    根本和佳

  5. PR

    新連載レビュー

    『水族カンパニー!』(イシイ渡) 偏愛獣医×ドジっ子飼育員の水族館コメディ

    根本和佳

  6. PR

    明日発売の新刊レビュー

    脇田茜『ライアーバード』音が見える天才少女と無愛想なギタリスト。2人の出会いが生む音楽

    たまごまご

明日発売の新刊レビュー

『熊西美術部 らふすけ先輩』(おにお)注がれる視線にリビドー持て余す彼女のフェティシズム

たまごまご

描きたい相手は、先輩しかいないんです

毎日毎日、女子生徒は後輩男子に、身体の隅々までじっくりと、見つめられている……。
「別冊少年マガジン」で連載中、おにお氏『熊西美術部 らふすけ先輩』単行本第1巻が、明日6月9日に発売される。

江田が自分を見つめて走らせる鉛筆の音。身体をソフトに触れられている気分だ

僕が探し求めていたヴィーナス

腕っ節の強い大熊西高校2年生の嵐恵(あらし・めぐみ)は、毎日美術室に通っていた。
美術部員だからではない。後輩の1年生・江田誠二(えだ・せいじ)が彼女をモデルに絵を描いているからだ。

江田は恵の容姿に、美を見つけたらしい。

「至高の芸術家たちは一人の女性に執着する人が多いんだ……ボク…今までピンとこなかったけど 先輩にそれを感じたんだよね ボクは先輩を描かなきゃって…」

そう語る彼の目は本気だ。

江田は純粋に美を追求している。だからこそ恵も抱いてしまった感情を必至に隠す

極めて真剣に彼女の姿を写し取る江田からは、下心は見受けられない。
むしろジッと見つめられる恵の方が、ただならぬ気持ちを抱いている。

美術室、ちょっとセクシャルなデッサンの時間

デッサンのため見つめられる時に湧き上がる不思議な感覚に、恵はいつも屈服してしまう
そんなエロティックな感覚を描いた、アートラブコメディ作品。

恵はデッサンされる度に、敏感に反応してしまう。身体が全然抗えず、もだえる。
一方江田は、黙々と描くのみ。
このすれ違いが、ねっとりしたフェティッシュな空気をコメディに変えている。

江田が恵の肢体を見つめて筆を走らせる様子は、まるで裸にして全身をなめまわしているかのよう。
「今首筋を描いている」と言われれば、恵は首筋に意識がいってしまう。鉛筆の滑る音が、振動が、身体に伝わってくる。

何ひとつひどい事などされていないのだが、ここだけ見ると江田がとてつもない悪人に見えてしまう

恵はモデルなので動けない、というのは大きなポイント。
元々彼女は、ケンカも気も強いことで、周囲に一目置かれている存在。
そんな彼女が、ひょろい江田に動けない状態で、じろじろ見つめられる。
SM緊縛プレイと似ている。彼女が視姦を連想するような表現もあり、全編に渡ってどこか嗜虐的にも見える。

見られ、描かれる官能

モデルをじっくり見て描く、というのは対象を見て取り込み、自分の感覚と照らし合わせて、アウトプットすること。

「僕も自分なりの美意識を追求しようと思うんだ」
「一目見て 僕のフェティシズムを感じられる絵を目指すよ」

身体が、江田の中を通り過ぎて、表現されている。
そう思うと自然に身体がほてってしまう恵。湧き上がるのは、谷崎潤一郎の小説のような官能だ。

絵は写実的なだけじゃない、相手の心が表現として現れるもの。一体どこを見ているの?

コメディではあるが、恵の感覚のほうが性的に生々しいだけに、全く心が揺るぐことなく絵をガリガリ描き続ける江田の様子はちょっと怖く感じることもある。
ふたりは恋人よりも相性がいい存在に出会ったのだ。コミカルな裏で繊細に描かれる性と芸術論は、見逃せない。

6月末には、おにお氏が「ComicREX」で連載している、少年と天才書道家女子高生が書道部で出会う『ユキトスミ』単行本も発売される。
またおにお氏は「まんがライフSTORIA」で、無防備先輩女子と純情少年の写真部での日々を描いた放課後コメディ『ふたりのじかん』も連載中。
どちらも『らふすけ先輩』と同じく大熊西高校が舞台となる。『らふすけ先輩』が気になったのなら、チェックしてみてほしい。



試し読みはコチラ!

©おにお/講談社