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互いの剣道愛をぶつけあうガールミーツガール『剣姫、咲く』山高守人

籠生堅太

「天才」と「凡人」の危ういガールミーツガール

純粋すぎる愛は、他人の目には狂気に映るものだ。
ひとりは誰よりも強くあり続け、もうひとりは誰よりも剣道を好きでいたいと願いつづけた。
そんな2人の剣道への愛がぶつかりあう「ヤングエース」連載作品、山高守人氏による『剣姫(けんき)、咲く』第1巻が、明日3月25日に発売される。

左が天才・戸狩姫咲、右が凡人・草薙諸葉。形は違えど、剣道を愛する者同士、剣で語る

剣聖と呼ばれる父を持ち、自身も「開闢(かいびゃく)の剣姫」と称される天才・戸狩姫咲(とがり・きさき)
恵まれない体躯、後輩にすら追い抜かれていく劣等感に苛まれながらも剣道を愛し続けた凡人・草薙諸葉(くさなぎ・もろは)
互いの剣道への想いをぶつけあう2人の姿は、まさに青春。けれどその関係は友達でもライバルでもない、いうなれば捕食者と餌のようなものだ。

ガールミーツガールだけど百合じゃない

姫咲と諸葉のやりとりには、思わずニヤリとしてしまう場面もある。
2人は出会って、お互いに影響を受けあっているように思う。
ガールミーツガールという言葉は、この作品を指す言葉として正しいだろう。

けれど『剣姫、咲く』が百合かと言われてば、ちょっと考えたい。なぜなら2人の間には、まだなんの絆も想いもないからだ。
長い黒髪が美しい姫咲が、こけしのようにちんちくりんな諸葉をからかう光景は微笑ましい。けれど姫咲は、諸葉じゃなく、「諸葉の剣」に興味があるのだ。

ただ剣道だけが姫咲の心を動かす

姫咲が諸葉を鍛えるのも、やがて彼女を自分の好敵手とするため。
弱い獲物には興味ない。やがておいしくいただくために、自分がより強くなるために、諸葉にも強く強く育ってほしい。
そんな姫咲の願いを諸葉はどのように受け止めていくのか。

盲信が作り上げた強さ

2人の不安定な関係を支えているのが、姫咲の盲信的な剣道への愛だ。
彼女はすべてを剣道に捧げている。強さこそが愛、剣道が強いものこそ、剣道を愛するもの。それが彼女の「剣道愛」。
剣道への愛が深いゆえ、剣道を愛さないもの、つまり弱いものが許せない。

そんな姫咲の「剣道愛」は弱いものからしたら傲慢のようにも見える。
けれどそんな彼女に、誰もが憧れを感じてしまうのも確かだ。
自分の全てを捧げてもいい。それほどまでに夢中になれるものを持っている人がどれほどいるだろうか。

試合の時はノーパン、ノーブラ。動きを邪魔する不純物は取り除く

人格者じゃない。常識もない。怒ったかと思えば、ケラケラ笑う。
たったひとつ「剣道を愛する」というシンプルなルールに従って生きる彼女は、いろいろなものに縛られて生きる読者にはまぶしく映るだろう。
有無を言わせぬ強引さと、想いの強さで、姫咲はどんどん物語を引っ張っていく。

今の関係が危ういからこそ、これからに興味がつきない。
姫咲のいる高みまで登っていく過程で、諸葉にどんな変化が起こるのか。諸葉は姫咲を変えられるのか。
この不穏なガールミーツガールは、どこに辿りつくだろう。



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©山高守人/KADOKAWA