明日発売の新刊レビュー
『魔装番長バンガイスト』霧隠サブロー セオリー無視のヒーロー漫画は、プロレス愛に満ちている
yomina-hare編集部
これは読者と作者によるプロレスでもある
悔しい。何が悔しいって、この漫画の異様さを十全に説明するための知識と語彙力を持ち合わせていないからだ。
「リイドカフェ」で連載中の、霧隠サブロー氏のデビュー作『魔装番長バンガイスト』の第1巻が、明日12月25日に発売される。
あまりにも荒唐無稽でトンデモナイ作品で、下手に解説すると陳腐化してしまう。「とにかく読んでみて!」という、ライターからしてみれば敗北宣言に等しい言葉が出かかるが、もう少し書き足してみたい。
リイド社 (2017-12-25)
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ツッコんだら負けな気がする破天荒なストーリー
群馬県の奥地で封印からよみがえった魔界一族と、人類に味方して魔界一族を裏切ったバンガイストの死闘を描く、というのが『魔装番長バンガイスト』のおおまかなストーリー。
一見すると『デビルマン』のような設定だが、似ているのはここまで。ハッキリ言って、ストーリーなぞ二の次と言わんばかりにその瞬間を楽しもうとする刹那的な作品だと思う。それくらいカオスな世界が広がっている。
二千年の封印から復活したのに、侵略は部下に任せて、すぐさま地底に引きこもる敵幹部に、ラーメン屋の豚骨臭で追跡を失敗する犬型魔界一族など、敵はポンコツぞろい。
突如、上半身裸の男が現れて、「こいつがバンガイストか!」と思ったら、ただのプロレスラー。
なのに死闘のはてに、魔界一族を倒してしまったり、その後レギュラーキャラと化したりと、まったくヒーロー漫画のセオリーが通用しない。
ただひとつわかることは、「プロレスラーは強くてかっこいい!」ということだけだ。
肝心のバンガイストはというと、食事を邪魔されたり、順番待ちに割り込みされたり、イヤホンからの音漏れに憤ったり、そんな些細な怒りがきっかけで変身するなど、ちょっとヒーローとしての資質に疑問を感じてしまう。
そんなことをしているうちに、多少の誤解をはらみつつ魔界一族すらも、プロレスラーをバンガイスト同様に自分たちへの脅威だと感じ始める。
繰り返す。プロレスラーは強い!
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©霧隠サブロー/リイド社