明日発売の新刊レビュー
『ロク+イチ暮らし』梅原うめ アパート住まいの女子短大生たちの「好き」のカタチ
たまごまご
出会って2年の関係は、あまりにも短い
アパートに住む6人の女子短大生たちと、大家の娘。それぞれみんなが、助け合う大切な仲間。彼女たちの友情や憧れはときに、「好き」という言葉に形を変える。
「コミック百合姫」で連載されていた、梅原うめ氏の初連載『ロク+イチ暮らし』の単行本が11月16日に発売される。
少し田舎にある御津(おづ)女子短大に入学することになった尾白(おじろ)すずめ。保育士を目指す、背の小さい女性。
「アパート宇美野(うみの)」での初めてのひとり暮らしは、新しいことへのワクワクと、人間関係への不安でいっぱいだ。
しかし、同じ保育科の先輩でおっとりした性格の竹渕奈々緒(たけぶち・ななお)や、元気でコミュニケーション上手なおしゃれっ子・花田(はなだ)さちなどと仲良くなり、夢をかなえるため頑張ろうと決意を固める。
2年間だけの短大生活の、始まりだ。
仲良くなるほど未来を憂う
短大生が集まるアパートを舞台にした、女の子たちの百合群像劇。
すずめは奈々緒に励まされるうちに、どんどん心が惹かれていった。
さちは大家の娘・しおりに、ひと目で恋に落ちた。
黄絵(きえ)は高校時代から先輩の堀藍(ほり・あい)が好きで、追いかけるように短大にやってきた。
きっかけは様々だ。
2年という時間制限を常に意識して、彼女たちの恋愛を描いているのが特徴的だ。
高校3年、大学4年より短い、2年という数字。
1つ上の先輩と、1年しか一緒にいられない。しかも卒業したら、全員が就職を考えているはず。あっという間にバラバラだ。
アパート宇美野に住む2年の井出紅子(いで・こうこ)は、仲のいい藍との関係を、じっくりと考える。
「たったの2年間 藍はあたしのことが好き あたしも藍のことが 多分 好き だけど高校生より短いこの時間で何ができるだろうか」
もし告白したとしても、されたとしても、進路が違えばすぐにバラバラになるのなら、むなしすぎるじゃないか。
だから仲良しな友人としての道を選んだ。
「この関係を続けるほうがちょうどいい」
一方すずめは憂いすぎて、楽しい日々が続いているのに、時折哀しみに溺れてしまう。
「来年の今 先輩はいないんですよね」
今一緒にいる幸せが、いつかくる別れを産むのかもしれない。そんな不安が見え隠れする。
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©梅原うめ/一迅社