明日発売の新刊レビュー
『わたしの巨人くん』香坂みり 高身長はもはや「怖い」?少女漫画のベタをアップデート
小林聖
新しいギャップ萌えの形
「雨の中で子猫を拾う不良」というのは、もはやギャグになるくらいの定型様式だが、ギャップ萌えは恋のギミックの定番中の定番といっていい。
「別冊マーガレットsister」に掲載され、明日9月25日に単行本が発売される『わたしの巨人くん』もそんなギャップ、知らない一面の発見から始まる恋の物語だ。著者の香坂みり氏にとっては、これが初の単行本となる。
集英社 (2017-09-25)
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高身長も無愛想も「クール」ではなく「怖い」
『わたしの巨人くん』は、あらすじだけさらってしまえば、ある日バイト先に入ってきた無愛想で怖い後輩の優しい一面を発見し、知らず知らずのうちに恋心を抱くようになるというベタ中のベタというべき話だ。
「どこかで見たことがある」と感じる人も多いだろう。
だが、そういう定番を読ませるのは、ディテールがしっかりとアップデートされているからだ。
たとえば王子様像。
主人公の女子高生・桜木唯(さくらぎ・ゆい)が出会う一見怖そうな後輩・鷹峰一也(たかみね・かずや)は、タイトルでも示唆されているように非常に大きい。高校1年にして190cmはあるという高身長男子だ。
身長が高いというのは、かつては少女漫画では問答無用でステータスであり、魅力のひとつとして描かれるものだった。だが、本作ではむしろ怖さの象徴するギミックとして取り入れられている。
無愛想で身長が高いイケメンといえば、今でもクール系として通用しそうだが、ここではどれも「怖い人」という第一印象につながっている。
俺様キャラが今も人気を誇る一方で、対話できる、話しやすいということが求められている現在らしい王子様像のアップデートを感じるポイントだ。
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©香坂みり/集英社マーガレットコミックス