新連載レビュー
星海ユミ『ヤンキーショタとオタクおねえさん』純情系ヤンキーショタと鈍感おねえさんの年の差ラブコメスタート!
武川佑
近くて遠い、オタクとヤンキー
個人的な意見で恐縮だが、ヤンキーが怖い。
過去カラまれたとか、直接的な被害を受けたことはないのだが……。明るい髪色や派手なファッション、独特な言葉遣いなど、「ヤンキー」という全国共通のスタイルを作りだす彼らと自分は、違う世界観に生きているのだなあと感じさせる。
独特のファッション。言葉遣い。メンタリティー……ん? 我々オタクも同じではないか?
そしてヤンキーショタと、オタク成年女子は、出会った。
ヤンキーとオタク、小学生とお隣のお姉さん。そんな近くて遠い絶妙な2人の恋の物語の始まりである。
ショタがBLイベントについてきてしまいました
pixivやTwitterで好評を博した星海ゆみ氏のショタおねラブコメ『ヤンキーショタとオタクおねえさん』の連載第1話が、9月26日に「ガンガンONLINE」で公開された。
「ガンガンONLINE」は『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』や『月刊少女野崎くん』など、ショートギャグで優れたヒット作を輩出したレーベル。本作もその流れにあって、絵やコマ割はすっきりと男女どちらの読者にも親しめる作品だ。
地味な社会人オタ(+腐女子)のかづ子は、隣に引っ越してきた見た目がもろヤンキーな小学生・愛川君(11歳)に、なぜかつきまとわれる。
ついに愛川君はかづ子の戦場(イベント先)にまで……しかもBL系(エロ有り)オンリーイベントである。
「かづ子ー! 色々ヤバいからその子は帰ってもらった方がいいと思う……っ!!」
と、思わず叫んでしまいたくなる出だしである。
……きっぱり断れるなら、苦労はないのだ。
かづ子は黒髪を後ろでくくった典型的な喪女であり、メガネで表情も見えない。
一方の愛川君は寡黙でしかめっ面、「あ?」と凄むと、ヒグマのごとき迫力。正直、怖い! あと、オタク知識が大分間違っている。
こんな2人に、果たしてラブが芽生えるのか? と心配になってしまう。状況はめっぽうコメディであるが。
素直になれない多感なショタが愛おしく、尊い
イベントの帰り道、疲れて寝てしまった愛川君の寝顔が可愛い。見た目はヤンキーでも11歳のシャイな少年。ぶっきらぼうなのはかづ子への好意を隠すためなのだ。
頬をぷにっとされそうになった時の、この表情。グッとくる
かづ子には「ヤンキーと男子が怖い」という強迫観念があり、愛川君のいじましい好意に気づくことができない。彼もシャイな性格だから、素直に好意を告白できない。
一方通行な想いを抱きながら少しでもかづ子に近づこうと、背伸びをしてしまう愛川君。あえて言おう、尊い――と。
片想いのドタバタから生み出されるすれ違いと、少しずつ縮まる2人の距離。ラブコメの王道が愛おしい。年の差ものであるし、オタクとヤンキーの相互理解の物語でもある。
サブキャラクターや展開次第で、2人には無限の可能性がある。
かづ子と愛川君の今後の展開を、微笑ましく見守りたい。
スクウェア・エニックス (2017-03-22)
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