明日発売の新刊レビュー
『HOTEL R.I.P.』西倉新久 死者の心残りを解消する、前向きな生と死のオムニバス
武川佑
人生の終着点で、あなたがやり残したことは、なんですか?
「Eleganceイブ」と「Champion タップ!」で不定期連載中の西倉新久氏の初連載『HOTEL R.I.P.』は、不慮の死にみまわれ、心残りをかかえた人々を描く、オムニバス形式の物語。その単行本第1巻が明日8月16日に発売される。
秋田書店 (2017-08-16)
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事故や災害などで、不慮の死を遂げる死者は、毎回ふたり。
奇妙な外観のホテルで、到底ホテルマンとは思えない怪しげな風貌の支配人・迎(むかえ)から、ふたりは相部屋で宿泊し、生前の「心残り」を解消するよう伝えられる。
彼らの「心残り」をめぐる5つの物語は、読み終わったとき、惜しみない拍手を送りたくなる。キラキラと光る、粒ぞろいを集めた1冊だ。
ホテルなのに、他人と相部屋!?
オリンピックを有望視されていた女子高校生スイマーと、なんの取り柄もない女子高校生。
人気絶頂のアイドルと、地方在住の性格の悪い女性。
心残りを解消できず5年もホテルに居続ける女性と、そして――。
明らかになる彼女たちの「心残り」とは? 死んでしまったのにどうやって「心残り」を解消する?
相部屋になるのは決まって、「それは合わないのでは……?」とこちらが心配になるようなふたり。
赤の他人だと思われたふたりが、エピソードを追うにつれて接点があるとわかったり、「あっ」と真相に気づく。話ごとに異なる爽快感がある。
演出がじつにさりげなく、伏線も巧みだから、クライマックスにむけ、彼らを応援したくて、ページをめくるのが速くなってしまう。
彼らの最高の「最期」を、しっかり見届けてあげてほしい。
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©西倉新久(秋田書店)2017