明日発売の新刊レビュー
『出会い系サイトで妹と出会う話』もちオーレ 出会い系で姉妹が結ばれる奇跡
たまごまご
運命なのかミラクルなのか、出会い系サイトで再会した姉妹はキスをする
急に寂しくなって、出会い系サイトで好みの女の子を探していた姉。
待ち合わせにやってきたのは、自分の妹・小夜(さよ)だった。
「同性愛者だとバレた上に姉も同性愛者という二重のショック」と小夜は大混乱。
Twitterで発表された第1話に11万以上の「いいね」が付いた(2017年7月現在)、姉妹の恋の物語。
もちオーレ氏の初単行本『出会い系サイトで妹と出会う話』が、明日7月27日に発売される。
単行本には表題作の他、「あっちゃんとかすみ―出会い編―」「ダメな先輩×デキる後輩」「ふたごゆり」「百合漫画描いてる事姉にバレて姉に百合迫られる百合漫画」など、女の子同士の短編物語が収録されている。
ずっとお互い寂しかったから
混乱する小夜をよそに、姉は妹と再会を喜び、そのうえ交際目的でデートできることを嬉しがった。
妹と本気で付き合いたいと願っている姉。
パニックになりつつも、ホテルまで着いていってしまう小夜。
ぽつりぽつりを一緒に暮らしていたころの話をするうちに、ふたりの間に小さなすれ違いがあったことに気づく。
何があったのか、ようやく理解して、姉は言う。
「私ら出会い系サイトで出会ったんだよ? 考えられる? 奇跡だよ 信じられない確率じゃん」
体からはじまる恋愛模様
姉は誰でもいいから女性とHしたかった。
妹も誰か女性に甘えたくて仕方なかった。
過去に抱いた恋がどうしても自分から抜けない。出会う相手とそれほど深い関係を望まない。けど、寂しいから何かしら慰めてほしい。そんな感情を「出会い系サイト」という設定に結びつけ、活かしている。
姉は妹との出会い系での再会を「奇跡」と言う。
しかし小夜に似た「細身のショートヘアの子がいい」と外見上のふるいにかけたり、ネットで気の合うことを決め手にしたり、直接会う前段階で自分の好みにあうように調査している。誰でもよかったわけではない。
妹側も、それなりに話の合う相手だと感じたから来たはずだ。
そうやって、ふたりの再会の下地は、知らぬまにそれなりにできあがっていたことが、後半でほんのり明かされていくのもうまい。
もちオーレ氏は、ふたりの「寂しさ」を性的関係と直結させている。
過去回想を見ると、姉が妹を初めて恋愛対象として意識したのは、また中学に上がったばかりの妹とキスした瞬間。体の感覚からのスタートだ。
次第に関係はエスカレート。キス以上にまで、既に発展済み。
当時は妹の方から(嘘をついてまで)姉を求め続けていたのだから、大人になった今とは逆だ。
今回の恋愛の再出発も、体の関係が欠かせないものになっている。
「だいたい妹と本当にそういう事したいと思えるの?」
「うんしたい 小夜となら尚更」
姉の口説き方は一切揺るがない。
思い出、寂しさ、恋愛欲求、性的欲求。しがらみがひとつずつ解かれて、お互いだけを見つめるようになる過程が、とても心地良い。
好きだから、現実的に生きていく
昔の恋を一気に再燃させる反面、リアルな生活の部分も姉はちゃんと見据えている。
姉妹2人で生きていくために、何が必要なのか、そのためにはどうしたらいいのか。
姉は実家にいた頃からしっかり考え、そのために猛勉強をしていた。
大人として地に足の着いた思考を描いているからこそ、2人の関係が進展した時にどうなるか、見ていて今後が安心できる。過去を取り戻し前向きになった2人に、エールを送りたくなる作品だ。
KADOKAWA (2017-07-27)
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