明日発売の新刊レビュー
『サトコとナダ』ユペチカ 愛おしさ満点のムスリムとのルームシェア生活
川俣綾加
とびきりかわいいムスリムの女の子
アメリカに留学中の日本人・サトコとサウジアラビア人でムスリムのナダ。
ふたりのルームシェア生活を描いたユペチカ氏の『サトコとナダ』第1巻が明日7月8日に発売となる。
2017年1月から30話限定で「ツイ4」にて配信されていたが、好評を博したためレギュラー連載が決定。Twitterでの配信でも、毎話とても反響の大きい作品だ。
ふたりが初めて顔を合わせるエピソードからスタートする物語は、食事やおしゃれなど一貫してミクロな目線で構成されており、文化や習慣の違いを通してイスラム教やムスリムについても理解が深まっていく。
今、この時だからこそ、読んでおきたい漫画だ。
当事者目線で描かれるムスリムの生活
日本で生活していればニカブ姿の女性は身近にいるものではない。サトコは初対面でニカブ姿のナダに驚くが、中身は普通の女の子だということをすぐに発見する。
ナダの「綺麗だからこそ髪や肌を隠す」という美意識や女子会でのハジけっぷり、恋愛や料理に対する考え方といったエピソードからはムスリムの生活をありありと想像できて楽しい。
また、女性が身体を布で覆い生活することを(少なくともナダ本人は)女性への迫害や悲観的な見方で捉えているのではなく「女としての対応を変えられることのない盾」と受け止めているのは新鮮だった。
ムスリム女性の感覚や価値観が、読者を驚かせようと描かれているのではなく、あくまで生活の一部として自然と描かれている。
ナダが自然とムスリムのことを教えてくれるような存在である一方、日本人のサトコは、日本人的感覚を体現した女性だ。
第43話で、サトコが可愛いワンピースを見つけるが、自分には似合わないと躊躇するのに対し、ナダは自分は自分のために大好きな服を着ると言い切るエピソード。
次のエピソードでは、サトコはそのワンピースを着ている。
日本にいて日本人同士の会話だったら、きっとこうならなかった。サトコはナダとの生活を通して確実に変化していく。
- 1
- 2
©ユペチカ/監修・西森マリー/星海社