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女子高生バイトが恋する駄菓子屋店長は子持ちのカエルだった『かわずや』蟹丹

塩田桂介

思い出の情景と少し甘酸っぱい恋

子どもの頃、少ないお小遣いを片手に駆けこんだ駄菓子屋さん。
そんな昔懐かしの駄菓子屋「かわずや」は、今日も子どもたちの声が賑やか。

店番をしているのは、おばあちゃんではなく……
アルバイトの女子高生・ゆうちゃんと、カエルの着ぐるみかと見紛う両生類! しかも彼はとても人情味溢れる「かわずや」の店長(子持ち)

WEBコミックサイト「コミックNewtype」にて連載中の、蟹丹(かにたん)氏による両生類とJKのほんわかする田舎の日常を描く『かわずや』単行本第1巻が2月10日に発売される。

アイスを落としてしまった男の子に、こっそりとサービスしてあげる店長。そんなやりとりに思わずほっこりしてしまうゆうちゃん

ゆうちゃんの視点から描かれるカエル店長との日常や“田舎あるある”は、日々の生活に追われるせわしない心を癒してくれる。

「年の差+異種族」そんなの恋する乙女には関係ないのです

セミ爆弾に、祭囃子、焚き火に焼き芋と、季節の移り変わりをともに歩んでゆく、ひとりと一匹+α(?)。緩やかに流れる「かわずや」での大切な時間。

加えて、ゆうちゃんの思春期特有の喜怒哀楽など、随所に差し込まれる高校生らしい日常が、間延びしそうな田舎描写のアクセントになっていて、物語に新鮮さを与えている。

学生の頃の色恋を思い出させるような、花ざかりのゆうちゃんが奮闘する姿に思わずニヤニヤ……。

店長の子どもをあやしながら店番をするゆうちゃんもまたかわいい!
それを見て冷やかす同級生とのやりとりは、無意識に出ていた母性をゆうちゃん自身が認識するには十分だったようで、読んでいるこちらが茶々入れたくなるようなのろけ顔! カエル店長の果報者め。

級友の言葉からゆうちゃんの想いが伺える

そんな穏やかなゆうちゃんの日常にのっぴきならない出来事が起きる。父子家庭であるカエル店長にお見合い話が……。しかも相手は人間の女性だという。さぁどうするゆうちゃん!

カエルと人間のお見合いが違和感なく受け入れられるという線引きがされることで、ゆうちゃんの想いが正当である世界観だとわかって少し安心。

言葉少なに伝わる思いもある

女子高生であれば切っても切れない”恋バナ” が物語に強弱を生んで、読み手をワクワクさせてくれる。

部活の走りこみ中、店長を見つけたゆうちゃん。その人をみつけたら自然と顔がほころぶ。その感情の名は……

「かわずや」に訪れる人々とは明らかに違う、カエル店長だけに向けられるゆうちゃんの無垢な乙女スマイルにキュンキュン。

隠れて駄菓子を食べていた店長。驚いた表情からしょんぼりした表情への落差が楽しい

当のカエル店長はというと、じつに人間的でコミカルに描かれている。
蛙の鳴き声のような最低限の台詞でありながら、その大きな身体に見合うだけの優しさと存在感がある。でもちょっとおっちょこちょい。擬人化した蛙を言葉少なに、これだけ表情豊かに描く表現に脱帽。

ふたりの日常は、大人と子どもの関係がどこからか崩れてしまうのでは? という不安を孕みつつも、お互いの信頼がそれを感じさせず、静かに過ぎていく。

夕立のバス停で、蛙の鳴き声よりも隣から聞こえる寝息に耳を傾ける

ブタメンを食べながら好きな人の話をしていたあの頃。駄菓子屋は学校では話せないような“秘密”を吐き出せる場所だった。
『かわずや』は、そんな色褪せても決して消えない思い出を、目に見える形で回想できる漫画だ。

喧騒を忘れたい大人の読者だけではなく、これから大人になっていく若い読者にも『かわずや』の“懐かしい思い出”を未来に持っていってもらいたい。



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©蟹丹/KADOKAWA