読み切りレビュー
無表情な義妹(10)と、仲良くなりたいシスコン兄貴『ふつつかな妹ですが』秋津貴央
たまごまご
彼女がちょっとだけ微笑んだ時の幸せ
8年ぶりに出会った妹は、全然笑ってくれない。
秋津貴央(あきつ・きお)氏の読み切り『ふつつかな妹ですが』が、4月26日からWEBコミックサイト「COMICメテオ」に掲載されている。
秋津氏は昨年4月に開催された「COMICメテオ」「COMICポラリス」の漫画新人賞「第7回 メテオ・ポラリス彗星賞」を受賞。満を持しての登場となる。

正座で礼儀正しく、全く表情を変えない妹
『ふつつかな妹ですが』は、兄と妹のディスコミュニケーション物語。相手を少しずつ理解しようとしていく様子を、丁寧に描いた作品だ。
妹の気持ちの距離は遥か遠し
陽人(はると)は、親違いの10歳の義妹・紫乃(しの)と一緒に過ごすことになって、浮かれていた。
ところが8年ぶりに再会した紫乃は、極端に彼に対して距離を置く。会話はすべて敬語。近づくとすぐに離れる。洗濯物はゴム手袋着用。
あらゆる行動に一線を引かれている。
完全に嫌われている、とショックを受ける陽人。しかし、彼女のツンとした行動には理由があった。

無表情かと思ったら、あたりの強い一面も。こんなこといわれたら、お兄ちゃんめげちゃいます
兄の表現、妹の表現
1ページ目から、兄・陽人のキャラはばっちり立っている。
妹大好きのレベルがちょっとおかしい。妹の写真を友人に見せてニヤニヤする妹バカ。留守番をしている妹へのおみやげに大きなぬいぐるみを、アイスだって山ほど買って与える。やりすぎ。
彼の裏表のなさは、読んでいて本当に心地よい。
一方妹の紫乃は、感情を表に出すことが一切ない。
三つ指ついて「ふつつか者ですがよろしくお願いします」、陽人がもてなすと「お気持ちはとてもありがたいのですが 私も置いていただいている身ですので」云々。
最初は何を考えているのかさっぱりわからない。

妹の紫乃、可愛すぎだろう! けれども心を開いて同じ食卓を囲めるかどうかは別
紫乃が陽人に食事を作るシーン。
彼女の料理は微妙だ(ド下手ではないバランスがうまい)。陽人は素直な感想を言えない。紫乃が「遠慮なさらず言ってください」とへりくだる。
これからふたりが「安心できる関係」になりうるかどうかの、試金石になる場面だ。最後まで読み終わってからここを見直すと、ふたりが互いに距離を縮めようとする努力にグッとくるものがある。
特別なんていらない
不器用な紫乃のために、陽人が作ってあげた図工の宿題。そんな些細なきっかけから、「特別」がどんどんなくなっていく。

感情がこぼれれば、年相応の幼い笑顔を見せてくれる
今までプレゼントやら何やらで紫乃のご機嫌をうかがっていた陽人が、「こンの天パめ!!」と彼女の髪をぐしゃぐしゃにする。紫乃をお姫様扱いすることから脱却した。
身体的特徴は、コンプレックスの可能性があり、地雷にもなりかねない話題だ。
ところが、紫乃は陽人を突き返すものの、天パ呼ばわりに対して怒っていない。急な接触についてのみ口にする

なんでも言えることが、家族の第一歩
序盤の陽人の行動と紫乃の行動は少し似ている。自分を下げて、相手の様子をうかがう。お互い自分の感情はあまり出さないように、嫌われないよう行動する。
逆だ。嫌われてもいい、自分の気持ちをストレートに言って、言葉をぶつけあえる方が、ストレスがたまらない。それが一緒にすごす「家族」だ。
この兄妹がさらに距離を詰めていく様子が見てみたい。
また短いページ数の中で、すごく大人びていたり、子どもっぽくなったりのバランスが魅力的な紫乃。彼女が他のキャラと絡んだ時にどういう行動を取るのかにも興味がわく。ぜひとも再登場してもらいたい。
©秋津貴央/COMICメテオ