明日発売の新刊レビュー
ドードー鳥の若奥様と歳上旦那様の微笑ましい日々『奥さまはドードー鳥』メノタ
籠生堅太
とびきり可愛いドードー鳥の新妻さん
夏彦さん(36歳)とももねちゃん(19歳)は、少しだけ歳の離れた新婚夫婦。夏彦さんは人間、そして新妻のももねちゃんは鳥、それも絶滅したはずのドードー鳥だ。
何を言っているのかわからない方も多いと思うが、この作品世界において人間と鳥が結ばれることは、私達が外国の人と結ばれるよりもずっとずっと一般的なことなのだ。
pixivコミック「クロフネ」に掲載されたメノタ氏の『奥さまはドードー鳥』が大量の描きおろしを加えて単行本化、明日3月23日に発売される。“可愛いすぎる奥さん”として、多くの読者を魅了したももねちゃんの愛くるしい姿を堪能してください。
ももねちゃんは可愛い“女の子”
ドードー鳥のももねちゃんには、もちろん動物としての愛らしさがある。もこもことした羽毛に包まれた姿は、それだけでキュートだし、走るのが苦手だったり、空が飛べなくてしょんぼりしたりとドードー鳥ならではのエピソードも描かれている。
けれどそれ以上にももねちゃんは、可愛い19歳の女の子なのだ。
夏彦さんがお土産で買ってきてくれたプリンに喜んだり、好きな映画の話を楽しそうにしたり、たまには怒って家出を試みたり……クルクルと表情が変わる彼女を見ているのは楽しい。
料理が好きで、豪華じゃないけれど丁寧なお弁当を作ってくれたり、迷子の子どもを放っておけなかったり。優しいご両親(ご両親はモズ! この世界では、人から鳥が、鳥から別の種類の鳥が生まれてくることも)に大切に育てられたももねちゃんは、女性としても十分に魅力的だ。
そう。“ドードー鳥だから可愛い”んじゃない。“可愛い女の子が、ドードー鳥だからさらに可愛い”のだ。
夏彦さんが彼女のことを好きになったのも納得ができる。
素敵な新婚さんの物語
夏彦さんとももねちゃんを見ていると、とても穏やかな気持ちになってくる。2人がお互いを大切に思い、2人の時間を大切にしていることが伝わってくるからだ。
それを支えているのは、ももねちゃんの可愛さではなく、一生懸命で優しい夏彦さんの姿だ。
ソファに並んでいるときに、そっとももねちゃんを抱き寄せる夏彦さん。普段はあまりメイクをしないももねちゃんを可愛くしてあげとうと、お化粧を勉強する夏彦さん。ちょっと残念なプロポーズをしてしまったので、改めてきちんとプロポーズしようと頑張る夏彦さん。
『奥さまはドードー鳥』は、ももねちゃんの可愛さを堪能させてくれると同時に、一組の素敵な夫婦の暮らしの暖かさを分け与えてくれる。
「奥さまが鳥」というパンチの効いた設定のせいで、ただ奇をてらっただけの作品と思っている方もいると思う。けれど本作が多くの支持を得ているのには、きちんと理由があるのだ。
この温かくて優しい物語が、ひとりでも多くの人のもとに届くことを願う。
©Menota/libre 2017