明日発売の新刊レビュー
カエルにサソリ……ヘンな食材を調理し食べるJK『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』ぽんとごたんだ
川俣綾加
桐谷さんを通して雑食の深淵を覗き見る
たぶん、私も桐谷さんと同じ「色々なものを食してみたい」タイプだ。ウーパールーパー、コガネ虫、ゲンゴロウ、セミ、クマなど色々と食べてみた。食べてみると案外おいしい。酒の肴にぴったりのものも多い。
普段は食用として考えてもみなかった彼らをおいしくいただくと「世界はこんなにおいしいものにあふれている!」と、目に入る風景が変化するのだ。
明日、9月12日に第1巻が発売する、月刊アクション連載中の『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』を読めば、世界がちょっとだけ輝いて見える。
桐谷翔子は幼い頃から食への興味が見境なく、うさぎを抱けば「おいしそう」とこぼすありさまだった。成長とともに食への好奇心もますます旺盛になった高校1年生の桐谷さんは、さらなる雑食の深みへと足を踏み入れていく。
発見×おいしい=幸せ の図式
第1話の“食材”はカエル。「下準備からやってきまーす」と言った次の瞬間、カエルの頭を容赦なく机の角に打ちつける桐谷さん。
おいしいものを口に頬張りながら食感をレポートしていくさまを想像していた読者は、ここで「!?」の文字が頭上に浮かぶだろう。
一体どこでそんな料理スキルと知識を手に入れたのか、彼女は楽しそうに包丁を入れていく。
ただ、味つけのスキルは低い。食の研究に付き合わされている、桐谷さんを昔から知る生物教師の榊が草食系スキル(食べられる野草に精通し味つけもバッチリ)を発揮することでいいバランスになっている。
作中では、「それ食べるの?」と一歩後ずさりしてしまう食材を、捌き方から調理の仕方、調味料の分量まで解説してくれる。親切丁寧、とても実践的で解説書の側面もある漫画だ。
釣ったコイ。シメて、血抜きして、ウロコを取って捌き「ノゴイの鯉こく」に。
榊が風邪で寝込めば、サソリ(!)を持参しお見舞いへ。おうちのキッチンで「サソリの素揚げ」にして元気をつける。
普段なじみのある食べている食材は、この世に存在するうちの一部に過ぎない。桐谷さんの“ヘンな食材”への好奇心は、いま自分が生きていること、生きているこの世界をもっと楽しもうとしている表れ。
その食材がおいしいとクリアになるたび、桐谷さんの目に映る世界(食材)はもっと輝いて見えるのだ。
双葉社 (2016-09-12)
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