明日発売の新刊レビュー
人外だらけのコンビニで、ニヤニヤがとまらない。 『吸血バイト霧島くん』鹿島初
たまごまご
コンビニでバイトをする吸血鬼のコメディ……なだけじゃない。いっしょに働いているのが、狼男にガイノイドにサキュバス。人間ゼロじゃん!
みんなきっちり働いているけれど、あんまり正体を隠す気はなさそう。えらいマイペース。
そのルーズさが、心地いい。
そんな『吸血バイト霧島くん』第1巻が、明日9月3日に発売される。
魔界の存在を、天使視点で見る
主人公・天宮(あまみや)えるは下級天使。
彼女は、世界に災厄をもたらすといわれる半吸血鬼(ダンピール)の霧島夕夜(きりしま・ゆうや)を監視しに来た。
ところが彼は、バイトをして学校に通う普通の人間のような生活をしている。危険にはとても見えない。
ひょうひょうとした彼は、あまりにもつかみどころがない。
天界の住人である天使の天宮は、魔界の住人である霧島くんのことが時折理解できず、彼の言動が気になってしかたなくなりはじめる。
初恋でソワソワする気持ちに、とても良く似ているんだこれが。
ニヤニヤ恋物語・ただし前途多難
食えない性格の半吸血鬼の霧島くん。天然のジゴロだ。
相手がドキッとすることを、特に女性が気になることをしれっと言う。
あくまでも、バイトの入れ替わりで、すぐ会わなくなったりすることが多いため、残ってくれるのは嬉しい、という意味。
だけど「ここに居てくれて嬉しい」なんて言われちゃったら、意識しない方が無理。
霧島くんは基本的に、にぶい。
天宮は回を追うごとに、自分が彼のことを特別に気にしているのを、理解していく。
彼女のうろたえっぷりは大変キュートでニヤニヤ。だが天使は恋愛禁止で、恋をすると堕天してしまうらしく、前途多難。
もっとも現時点では、天宮さんは恋愛よりもお金のほうが大事らしいので、安心です。
際どいネタと、思春期精神盛りだくさん
この作品の楽しみの一つは、ちょっとセクシャルなネタだ。
明確なエロは一切ない。健全。
しかしちょっとぼかした会話が、度々艶めかしい。
性的快楽……天宮さん、気持ちよかったんですか!?
どんな姿にでも変身できる月館操(つきだて・みさお)が来てからは、当然その手のネタもパワーアップ。
恋人はいないけど「オトモダチ」は多い発言などは、さすがにドキドキする。
そんな月館ですらウブになってしまうのが、霧島くんワールド。
一部年齢不詳な存在もいるが、みんな心は思春期状態。
濃いキャラがどんどん登場し、それぞれに必ずニヤニヤポイントを抱えている。
読めばきっと、お好みのキャラが、あるいはカップルが見つかるはずだ。
KADOKAWA/角川書店
売り上げランキング: 17902
©鹿島初/KADOKAWA