明日発売の新刊レビュー
『針棘クレミーと王の家』唯根 いたずらハリネズミと英国紳士のノスタルジックファンタジー
籠生堅太
心にちょっと刺さる棘
動物たちだけでなく、エサースロンや真っ黒のプーカといった妖精も作中には登場する。
妖精や妖怪といった、この世ならざる存在の姿を見ることはなくとも、いてほしいと願っていたことのある人は多いだろう。彼らの登場もまた、どこか懐かしい空気を醸成する。
友達のふりをして近づき、悪さをする妖精・真っ黒のプーカ。
クレミーは、プーカと友達になれると思ったのに、裏切られたことにショックをうける。
「だれとでも仲良くしましょう」。
親からも、幼稚園や保育園の先生からも、最初はそう教わる。
けれどそれは理想でしかなく、実現は不可能に近い。
そんな現実に気がついてしまったときの違和感や無力感を思い出させるエピソードだ。
いたずら好きのクレミーのかわいさに癒やされつつ、どこか懐かしい空気を感じて優しい気持ちになれる。年末の慌ただしい今の時期にこそ読みたい1冊だ。
竹書房 (2017-12-16)
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©唯根/竹書房