明日発売の新刊レビュー
野良猫を人間の不良で描く猫漫画の新機軸『NYANKEES』岡田淳司
川俣綾加
猫でヤンキー? 暴力とかわいさのボーダーレスがくせになる!
「少年エース」で連載中の『NYANKEES』は、ゆるカワ猫漫画に強烈な猫パンチをぶち込むがごとく、熱い心意気を感じる新機軸の猫漫画。単行本第1巻は明日、1月26日に発売される。
猫鳴町を縄張りにしているヤンキーグループの前に現れたひとりの男・リューセイ。物語は、リューセイが彼らの「食堂」で食事にありつこうとしたことから始まる……。
そう、彼らは野良猫。
縄張り争い、メスの奪い合い、ボスの座をめぐる戦い。厳しい世界で生きる野良猫達を人間の不良の姿で描いたヤンキー漫画でもあるのだ。
かわいさと殺伐とした空気が入り混じる
“片目に傷のある三毛猫の雄”を探して町にやってきたというキジトラ猫のリューセイだが、「町の掟を破った」という理由でボス猫・タイガの容赦ない攻撃(猫パンチ)を受けることに。
猫の姿で描かれていると何をしていてもカワイイが、作者の岡田淳司氏が描くゴツい男たちが非常に巧みなせいで「にゃんこのかわいさ」と「ヤンキーの熾烈な争い」が両立したアクロバティックなページが続く。
自分はいまなんの漫画を読んでいるのだろうか? 猫漫画?ヤンキー漫画? おや、なんだか世界がグルグルしてきたぞ……?
そんな頃合いになると、仰向けになってエサをおねだりしたり、箱の中に気持ちよさそうに収まったり、カワイイ猫ちゃん描写を忘れずに入れてくるのが実に計画的でけしからん。
ヤンキーと野良猫の相性は最強
野良猫を人間の不良の姿で描く。よく考えてみれば、これはとても理にかなっている。
縄張り争いや権力闘争、そうしたなかで育まれる絆など、人々がパッと浮かべるヤンキー漫画の要素は、そのまま野良猫たちの生活と共通するものも多い。
猫好きからすれば道行く野良猫も「モフモフなお尻をそんなにプリプリさせて、触っちゃうぞ」くらいの萌えた目線を送る対象だが、当の野良猫たちからすればエサを手に入れられなければ死ぬシビアな日々。
ヤンキーは野良猫の世界を仮託する対象にぴったりの存在なのだ。
描かれているのは熾烈な世界だけれど、どこか笑えてカワイイ。『NYANKEES』という作品そのものが猫漫画の新ジャンルだ。
KADOKAWA (2017-01-26)
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©岡田淳司 / KADOKAWA