『boy meets “crazy” girl』川夏子　恋愛のルールブックに新しい1行を書き足すなら

誰もが少しずつ“crazy”を持っている

「昼夜逆転ガール」の場合は夫婦の関係の話だが、『boy meets “crazy” girl』ではさまざまな愛情の形にフォーカスする。

退職する先輩が残した品を焼却する後輩、理想の人の姿を描くことでその人のようになれるのではないかと妄想する美大生、ラブホテルというものの存在も知らなかった頃に、お城のようなその建物にいっしょに行きたいと約束した男女。
ずばり恋愛感情というものもあれば、そういう形に当てはめにくい感情もある。

「ダンシングガール」に登場する恋人の、ちょっと変わった甘え方。全身で愛を表現しているんだとか

だが、はみ出しているからといって、それがニセモノというわけではない。
というよりも、本当のところ、誰もがはみ出した部分やはみ出した感情を持っている。何から何まで「普通」ということはないのだ。

人間関係、とりわけ恋愛関係は一定のルールと規格を要求する。
その一方で1対1の関係では、一般的なルールからはみ出たものとどう向き合うかということが重要な問題でもある。

会話劇が中心の本作では、背景など風景の描写も印象的だ。距離感や心情が景色とともに伝わってくる

『boy meets “crazy” girl』で描かれるのは、そういうはみ出したものとの向き合い方だ。自分の、あるいは相手の“crazy”にどう向き合い、どう答えを見つけるか。それは、人間関係のルールブックに自分だけの、2人だけの1行を書き足すような行いだ。そして、それこそが関係を特別なものにするものである。

『boy meets “crazy” girl』はそういう特別な1行を書き留めるような作品集なのだ。

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boy meets "crazy" girl (フィールコミックス)

posted at 2017.12.7

川夏子
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