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『boy meets “crazy” girl』川夏子 恋愛のルールブックに新しい1行を書き足すなら

小林聖

恋愛関係のルールを少しはみ出すとき

「恋愛はゲームではない」と多くの人が言う。
けれど、一方で恋愛は多くの暗黙のルールによって成立している。

わかりやすくは、たびたび議論になる「浮気のライン」。
「キス」「セックス」といった行為は多くの人がアウトというだろうし、人によっては「ふたりきりで遊びに行ったら」と言う人もいる。

逆に言えば、こうした行為そのものが恋愛関係を成立させるフラグでもあるということだ。
お互いに好意を持っている同士であったとしても、キスや告白といった何らかの儀式を通過しないかぎり、「恋人同士」とは呼びづらい。恋愛関係が特殊なのは、成立にこうした外形的な要素を必要とする点だといっていい。

けれども、同時に人間関係の本質は形式ではない。
12月8日に発売される川夏子氏の初単行本『boy meets “crazy” girl』は、そういうルールの外にはみ出した恋愛や関係を描いた作品集だと思う。

誰とも生活リズムが合わない女の子にピッタリの恋人って?

『boy meets “crazy” girl』には、タイトルどおりちょっと“crazy”、変わった部分を持った女の子たちのいろんな物語が収録されている。

憧れの人に近づくために、髪型から服装まで双子のように近づける「キミになりたいガール」や、1日何度も服や髪型を変える「七変化ガール」、夜眠ることができなくなった女の子の結婚生活を描く「昼夜逆転ガール」などさまざまだ。
さらに男の子をメインにした「boy meets “crazy” boy」やボーナストラックの「girl meets “crazy” girl」もある。

主人公・鳴尾そっくりに“変身”する「キミになりたいガール」。これはこれでかわいい

多くはいわゆる恋愛関係の話。
たとえば「昼夜逆転ガール」では、普通に働く夫と、夫を見送って眠る妻の、生活リズムの噛み合わない夫婦生活を男女それぞれの視点から描いている。

妻視点の物語は、彼女が夫に出会うまでの物語だ。
大学時代の海外旅行以来、体内時計が狂ってしまった彼女は、誰と暮らしても生活時間が合わない。何とか寝かせようとする人、いっしょに起きていようとする人……どの恋人も結局うまくはいかない。
「普通」からはみ出てしまった彼女にとって、誰かとの生活は難しいことなのだ。

「昼夜逆転ガール」妻の視点編の導入。文章の端正で美しいモノローグのフレーズ選びも印象的だ

「いつかおんなじリズムのひととめぐりあえたなら」と願う彼女が、あるとき出会うのが現在の夫だ。

彼は別に昼夜逆転生活を送っているわけではない。旅先で初めて彼女が夜眠れないことを知ったときも、あっさり先に寝ようとする。

だが、今度もダメか、と思ったとき、彼は意外なことを口にする。何を言ったかは本編を読んでみてもらうとするが、ここで描かれるのは彼女が必要としていたのは「自分と同じ人」ではなく、「普通でない部分をそのまま受け入れようとする人」だったということだ。



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誰もが少しずつ“crazy”を持っている


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©川夏子/祥伝社フィールコミックス