明日発売の新刊レビュー
『凛とチア。』山田シロ彦 チアリーディングとLGBTをからめた王道部活もの
武川佑
私のやりたいことは、これだ
そして物語は現代へ。私が強く勧めたいのは、ここからだ。
成長した凛太郎が入学した高校のチア部は、廃部寸前。先輩部員はたったひとり。
その先輩・沢渡沙穂(さわたり・さほ)がチアの演技をするシーンは、胸をうたれる。
自信を失っていた沙穂にわいてくる感情――それは純粋に「楽しい」という気持ち。
殻をやぶっていく姿に勇気づけられ、気づけば私も観客になって拍手を送っていた。
誰もが、本当にやりたいことを探している。夢中になれることを。
私がやりたいのはこれだ、と「出会う瞬間」が、『凛とチア。』にはたくさん描かれている。
「ありのまま、笑顔で、楽しい気持ちを理解してもらえる喜び」、それはチアリーディングにもLGBTにも共通する生き方だと思う。
凛太郎たちのまっすぐな笑顔は、読者の私たちの心をつかむ。
物語は始まったばかり。凛太郎以外の男子メンバーにも期待したいところ。
凛太郎と兄との再会を待ちつつ、まずはチア部の笑顔を追いかけたい。
集英社 (2017-11-17)
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©山田シロ彦/集英社