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『凛とチア。』山田シロ彦 チアリーディングとLGBTをからめた王道部活もの

武川佑

私のやりたいことは、これだ

そして物語は現代へ。私が強く勧めたいのは、ここからだ。
成長した凛太郎が入学した高校のチア部は、廃部寸前。先輩部員はたったひとり。
その先輩・沢渡沙穂(さわたり・さほ)がチアの演技をするシーンは、胸をうたれる。

たったひとりのチア部。部室も割り当てられず、練習もできない。やりたいことを許されない――凜太郎は、彼女の姿にかつての兄を重ねる

自信を失っていた沙穂にわいてくる感情――それは純粋に「楽しい」という気持ち。
殻をやぶっていく姿に勇気づけられ、気づけば私も観客になって拍手を送っていた。

楽しいという気持ちは、伝わっていく。新入部員のこの笑顔。凛太郎と沙穂の熱意は、周囲を笑顔にしていく

誰もが、本当にやりたいことを探している。夢中になれることを。

私がやりたいのはこれだ、と「出会う瞬間」が、『凛とチア。』にはたくさん描かれている。
「ありのまま、笑顔で、楽しい気持ちを理解してもらえる喜び」、それはチアリーディングにもLGBTにも共通する生き方だと思う。

凛太郎たちのまっすぐな笑顔は、読者の私たちの心をつかむ。

物語は始まったばかり。凛太郎以外の男子メンバーにも期待したいところ。
凛太郎と兄との再会を待ちつつ、まずはチア部の笑顔を追いかけたい。



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©山田シロ彦/集英社