明日発売の新刊レビュー
『ストロベリー・ゴー・ラウンド』カネタケ製菓 姦しい楽園の外へと向かう少女たちの瞬間
小林聖
楽園の外に広がる荒野へ向かう少女たち
しかし、ただのハイテンションガールズトークマンガかというと、そうではない。『ストロベリー・ゴー・ラウンド』は強烈な「内輪」を描くと同時に、その外側も描いている。
たとえば、恋。
くーやんが「ストーキングしている」と語る相手は、実は通学途中の地下鉄の向かいのホームで見かけているだけの男の子だ。
不安を吐き出したりもするものの、仲間内では話の種であり、笑いにもしている。だけど、いざ向かいのホームへ行き、その人本人に近づき、名前を知った瞬間、ふっと彼女は我に返る。
「切り離されたまったく違う別の世界」の人に思えていた彼が、同じ世界で普通に生きるひとりの人間であることに気づくのだ。

「内輪」という共感の世界。そこでは「私」がそのまま「私たち」でもある
友人、とりわけ学校という生活背景もともにしている「内輪」は、ひとつの楽園だ。そこでは改めて確認しなくても話は阿吽で通じるし、気兼ねなく何もかもを共有できる。
だが、恋は、その自分の外側へ足を踏み出すことを要求する。何を話せばいいのかわからない、どういう人なのかもまったく知らない楽園の外の人間との対話だ。また、進路や将来といった決断も、その楽園の終わりを求めてくる。

戸惑うことなく生きているように見える他人も、葛藤を抱えている
『ストロベリー・ゴー・ラウンド』が描くのは、楽園の外側へと踏み出すそのほんの少し手前の瞬間だ。誰とも一体でない、自分だけで何かを決める荒野へ向かう少女たちの心の揺らぎが、姦しい楽園の会話劇の向こうに描かれているのだ。
秋田書店 (2017-08-08)
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