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美大生のまっすぐな祈りの物語『モディリアーニにお願い』相澤いくえ

根本和佳

努力と熱意を捧げる、まっすぐな「祈り」の物語

どうして僕たちは、描くんだろう。作るんだろう。
現役美大生にしてデビューした相澤いくえ氏『モディリアーニにお願い』単行本第1巻が、明日10月28日に発売される。

美大生の、ひたむきで全力な毎日

東北の山の中にある小さな美大。
壁画の千葉と日本画の本吉、洋画の藤本は、学年でたった3人の男子だ。彼らは毎日、バカ笑いしながら制作を続けている。

美大というと、天才と変わり者ばかりの浮世離れしたイメージが浮かぶかもしれない。
だが、この作品で描かれる彼らは、ただただ真摯だ。才能に憧れ、成功に嫉妬し、それでも地道な努力を続ける、ひたすら一途な青年たちなのだ。
同学年のライバルや個性的な先生、道しるべとなる先輩に出会い、その真剣な想いに触れて、彼らは成長していく。

必死で努力してきた人間が言う重み。「そうでもしないと勝てない」「もっともっと努力するんだ」

この作品は、すべて手描きだ。スクリーントーンやデジタル機器を使用せず、ペンと墨だけで描き込まれている。絵柄は拙いようで熱量があり、深みがある。幻想的な内的世界を描くときの表現力も素晴らしい。

その絵に乗せて語られるのは、祈るように刻まれた、努力と熱意の物語である。
「美人だから選ばれた」と揶揄される女子学生。やりたいことはすでに誰かがやってしまったと悲観している先輩。震災に触れ、描く意味を見失ってしまった仲間。

あの震災も、描かれる。あったこととして。そっと、淡々と……

創作の力を信じている強さ

だが彼らには、近くで見ていてくれる人がいる。前を歩んでいる人がいる。彼らの真剣さを理解する先達が、友が、ありきたりの言葉ではなく、芝居がかったセリフではなく、自分の言葉を、きちんと正面から投げてくる。

「誰かにがっかりされたくないんだよね。私はね、その為に頑張ってたの」

読んでいる私たちも、そうありたいと願う。
そして彼らが踏み出す一歩は、実感と決意のこもったものとなるのだ。

簡潔でまっすぐな言葉が、私たちにも刺さる

メッセージが心に響くのは、美大で過ごしてきた著者自身が感じたことや、誰かにもらった言葉を、大切にしてきたからだろう。
なにより著者本人が、創作の力を信じているのだ。

人は、人を励ませること。
人のつくるものは、誰かの励みになること。

このやさしい物語が見せてくれるのは、その証明である。



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©相澤いくえ/小学館