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読み切りレビュー

極道という血の掟で塗り固められた儚くない百合『仁義なき百合たち』印度カリー

yomina-hare編集部

ヤンデレお嬢と黒ギャル下僕の綺麗じゃない百合

「百合とは潔白で美しい華のようなものである。そして百合は、必ずしも恋愛である必要はない」とは百合好きの知人の談。そんな清廉なビジョンをぶっ飛ばす百合漫画が登場した。
「ウルトラジャンプ」2月号に掲載の、印度カリー氏による読み切り作品『仁義なき百合(おとめ)たち』だ。

極めの百合道が始まる

極道組織の黒ギャル娘が、親組織の令嬢の理不尽な我儘に晒される極道ギャグ百合漫画だ。

カチコミを かけてきたのは 姫極道

極道組織「八条組」組長の娘である八条美弥(はちじょう・みや)はある厄介事に頭を抱えていた(恥ずかしい水着姿を晒しながら)。

上部団体である六道組組長のひとり娘・小日向さえの世話を押しつけられてしまったのだ。
たとえ「カラスは白い」と言われても、首を横には振れない極道社会。断るという選択肢は最初から美弥にはなかったが、高飛車お嬢なさえの嫌がらせにも似たお遊びに、振り回されて疲れ気味。

2人の出会いは、さえによる八条組へのカチコミ。鉄砲玉には到底思えない美少女の強襲にざわめく八条組の面々をよそに、涼しい顔で組長である美弥の父・八条辰五郎(はちじょう・たつごろう)を「名刺じゃんけん」で降すさえ。

極道の暗黙のマウンティング。より地位の高い人物の名刺を出した方が勝つという闇ゲーム。なにそれ……

そこから美弥の苦難は始まったのだ。

徐々に華開く極道流ヤンデレ百合

極道同士の百合とは何か。

少女達の一瞬一瞬の強烈な心の結びつきが、いずれ消えてしまいそうな儚さが百合ならば、それを極道という血の掟で補強した『仁義なき百合たち』は、永遠に覚めることのない、百合の最終進化系なのかもしれない。

極道という2人の絶対主従関係が、物語を加速させる。
日本最大の極道組織の娘ともなれば、下部組織の人間に対する扱いなぞ豚も同然だ。
そんなさえの仕打ちに、歯を食いしばって耐える美弥が、ぽんこつかわいい。

躾と称して隷属を迫るさえ

しかし物語が進むにつれ、さえによる美弥弄りにも徐々に変化の兆しが見え始める。
極道の娘という立場から友人を作れなかったさえ。巨大すぎる権力に、大人ですら彼女に媚びを売り、誰かの本音を受け止めたことのなかったさえ。絶対主従という関係が崩れたとき、彼女の思い(と吐瀉物)が溢れ出すシーンは、笑いのなかにも謎の感動がある。

美弥の本音を受け止めきれず、思わずいろいろと溢れ出してしまうヤンデレお嬢

「清楚系高飛車お嬢様×金髪褐色ヤンキー」で贈る、SM、ヤンデレ、ツンデレ、関西弁、壁ドン、羞恥、その他諸々全部乗せな勢いの本作。しかし胸焼けすることもなく、最後までスッキリと読むことができるのは、さえと美弥の掛け合いのテンポのよさからだろう。

きっと2人の関係はこれからも続くのだろう。
なぜなら親兄弟との血のつながりよりも、盃のほうが重たいのがジャパニーズ・ヤクザ。
暴力と罵声が飛び交う、甘いくて酸っぱい日々よ、永遠に。

©印度カリー/集英社