明日発売の新刊レビュー
『映像研には手を出すな!』大童澄瞳 女子高生がアニメで目指す“最強の世界”
たまごまご
空間を描く吹き出し表現
見ているアングルにあわせてパースがかかっている吹き出し。背景の一部のようだ
ところどころで、吹き出しと文字にパースがかかっているのが特徴的だ。
通常の漫画は、どのコマでも吹き出しは正面を向く。
しかしこの作品は、背景に奥行きにあわせて、吹き出しやその中に書かれるセリフにもパースがかかることがある。
また声が聞こえてくる方向から、セリフにパースがついていることもある。見ていると声の音量まで感じられる。
キャラの動きにあわせて文字が傾くこともある。音そのものに動きがある。
漫画自体が、アニメーションのような動的感覚で作られている。
吹き出しとセリフは、「カメラが映した背景の一部」「動くキャラクターの一部」として処理される。
特に浅草はちょこちょこと動き回る。走ったり潜ったりする時に吹き出しにパースがかかると、彼女のわんぱく感が見えてくる。カメラ(読者の視点)と彼女の距離が、立体的に感じられる。
小学6年の時点での浅草の冒険は、自分が住む団地への想像力から始まった。
今の彼女は、どんなところへだって想像で冒険にいけると信じて疑わない。しかもそれを表現する術を手に入れた。
この作品もまた、吹き出し、描きこんだ背景、緻密な浅草の妄想設定などを駆使して、自由に飛び回ろうとしている。
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©大童澄瞳/小学館