単行本レビュー
『東京入星管理局』窓口基 大暴れギャルズVSグロテスクで美しき異星人
たまごまご
情報量特盛り、ギャルと違法密入星者の豪快アクション
超大都会のビル街、配管ひしめく薄暗い裏路地。潜入したふたりのギャルが、殴る蹴る銃を撃つの大暴れ。
空間を固定する銃を持ち、背中からは「店長」と呼ばれる男の腕を出すことができるライン。規定外の戦闘能力を持つ正体不明の黒ギャル・アン。2人がバディを組んで追うのは、密入国者ならぬ「密入星者」、つまりエイリアン。
COMIC MeDu(こみっくめづ)に掲載されている窓口基氏の初連載作品『東京入星管理局』は、描き込み量と情報量が特盛の痛快サイバーパンクアクションだ。
ジーオーティー (2019/5/31)
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アクションを楽しむうちに、作品世界が見えてくる
この作品、とにかく情報量が多い。
1コマ、1ページの中にSF的設定がギュウギュウに詰め込まれているうえ、各エピソードの間には文字がびっしりの解説ページまで設けられている。一読目に全てを理解し把握するのは、ほぼ不可能なくらいの情報量だ。
ただし、そこは一旦後回しにして読み進められるさじ加減。まずはド派手なアクションを見られるのが楽しい。
ラインの行動は良い意味で雑。事件に遭遇した際も「記憶防疫班と現状復元チームとえーっと あとなんか必要そうなやつ頼んます」といったいい加減な連絡をする。
もちろん記憶防疫班などの設定は作品世界を支える重要な要素なのだが、アクションシーンにはさほど影響しておらず、読むときもとりあえずは考えなくていい。
このノリを楽しんでいるうちに、徐々に全体的な構造が理解できてくる。
読み終えた後に再読すれば、この作品における宇宙や次元のありかたが少しずつ飲み込めてきて、さらに面白くなる。問答無用の豪快アクションと、繊細な世界観が調和した作品だ。
美しき異星人たち
人間服(スーツ)を着ているため、一見人間にしか見えないエイリアンたち。正体を明かしたときの、異形の姿を見るだけで楽しい。
とくに人間を材料とした人間服を作るエイリアン・次元越境花の描写は一見の価値あり。人間繊維の情報を展開して畳むことを繰り返し、高次元に花を咲かせる……言葉ではどうやっても表現できない状況を、放射対称のような美しい文様で描く。
著者は「窓」名義で、成人向けコミックでも活躍しており、カニバリズムなどグロテスク描写を得意とする。
麻酔をせずに脊髄部分を切開して手術する、といったシーンもちょっぴり盛り込まれているが、露骨な描写は控えている。しかしその分、エイリアンたちは人体を連想させるデザインが随所に盛り込まれ、より印象に残るグロテスクの美を表現している。
こちらを見ているのは深淵側だ
「深淵は覗き込んだ時 覗き返してくるのではなく 向こうはこちらを 常に見つめていて こっちは覗き 込んでみて初めて 向こうと目が合う ことに気づく」
地球人たちは、一定の領域しか見ることができない。しかし宇宙人たちの世界はその外側にあり、ずっとこっちを見ていると作中では語られてる。
そうした宇宙人たちの世界に恐れず踏み込んでいき、どんぱちかましてぶっ壊し、問答無用で違法宇宙人を討伐するのが、この作品だ。
それは憑き物を落とし続けていくかのようで、カタルシスにあふれている。
まだまだこの世界の設定は深そうなのだが、1巻では彼女らの戦いを描くことに注力されている。まだ明かされていないであろう難解な部分はあるので、今後の展開に期待。まずはふたりの少女が大胆かつテクニカルに大暴れする様子を楽しもう。
ジーオーティー (2019/5/31)
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