単行本レビュー
『先輩が忍者だった件』クサダ セクシーだけどエロくない「お色気」くノ一コメディ!
一ノ瀬謹和
網タイツのセクシー抜け忍OL、誕生!?
会社の美人上司・服部先輩の正体は、現代に生きる忍者!? 秘密を知ってしまった忍者マニアのダメダメサラリーマン・石田君は、口をつぐむ代わりとして、服部先輩にひとつの条件を提示する。その条件とは、なんと自作の忍装束(ボディコン風)に着替えてもらい、服部先輩にセクシー女忍者と化してもらうことだった!
次々と現れる美女忍者の刺客を相手に、ふたりのスチャラカバトルが今、始まる……!
古き良きコメディマンガの復権
「楽園」web増刊で連載中の『先輩が忍者だった件』は、オリジナル系同人誌即売会・コミティアなどでの活躍で知られるクサダ氏の初連載作品。
常識人くノ一・服部先輩と、ちょっとおかしい一般人・石田君が織りなす、漫才のような軽妙な掛け合いは、どこか懐かしさすら感じるコテコテ気味なセンスで彩られている。その作風は今日の価値観で、あるいは「古い」と表現されてしまうものなのかもしれないが、安定感はコメディマンガにおける重要なファクターであり、軽視されるべきではないだろう。
余計な不安を抱かず、スカッとシンプルに楽しめるスナック感覚の読み応えは、波長が合う人にはトコトンしっくり来る美点であるはずだ。
勿論、本作をただのオールドスタイルに留めない、特筆すべきポイントも存在する。それは著者のずば抜けた画力である。
コミカルにディフォルメされた絵柄は見やすさ、親しみやすさを重視しつつも、忍装束などの魅力的なディテールは逃さずに盛り込まれている。そのバランス感覚によって、かわいさと実在感を両立させる手際は、まさに新人離れした力量というほかない。
キャラクターデザインも端的に言って最高……全部の絵が最高に可愛い……。
あくまでも「お色気」シーン
本作は女性キャラクターのセクシーさを主軸にした作品である。
露出度の高いボディコンくノ一衣装など、所々に強いフェティシズムを感じさせる箇所はあるものの、同時にそういったセクシーを、コメディ的軽快さを損なうようなエロスには到達させないという著者の意識もまた伺える。
「エロすぎると笑えない」、言葉にすれば至極単純な話なのだが、この葛藤が作品にある種の緊張感を与えているのは間違いない。過激の一途を辿りがちなお色気マンガにおいて、お色気シーンとはどうあるべきか、作品を持って読者に答えを示しているようにも思えてくる。
なんにせよ、お色気コメディ界に巨大な新星が現れたことは間違いないだろう。著者の今後の活躍に注目し続けたい。