まとめ
先週のオススメ初単行本(2018.3.18〜3.24)
yomina-hare編集部
先週発売されたオススメ初単行本2選
先週、初めての単行本を発売し、漫画業界という大海原で更なる一歩を踏みだした新人漫画家がいる。
そんな記念すべき初単行本中から、「yomina-hare」的に大注目の作品を2つご紹介!
『野宮警部補は許さない』宵田佳
史上最高に大人げない警部補、現る
警察内部の非違事案(ひいじあん)、いわゆる不祥事を処理する監察という部署がある。彼らが対応できない細かなトラブルを解決するのが、本作の舞台となる警察庁警務部特別対応室だ。
「WEBコミック ぜにょん」で連載中の『野宮警部補は許さない』は、特別対応室に赴任してきた新人・橋本檸美(はしもと・れみ)の視点から、彼女の教育係で信じられないほど大人げない野宮憲司(のみや・けんじ)の姿が描かれる。
正義の味方である警察官が加害者側に回るわけだけど、「正義とは?」みたいな堅苦しさや、重苦しさはない。何故ならば野宮が非違事案を解決するモチベーションは、正義どころか100%私怨……それも「自分の写真を勝手にSNSにあげられた」みたいなしょうもない理由だからだ。
とにかくひねくれている野宮警部補が、悪徳警官……と呼ぶには雑魚すぎる小悪党どもを、こすい罠にはめていく様子が、とにかく楽しい。
誰かを裁くというのは、どんなに正しくても暴力的な側面を持つ。ましてや相手が“正義の味方”であるはずの警察官ならばなおさらだ。だからこそ野宮が大人げなく、小賢しい方法で「嫌いな相手を痛い目にあわせる」というスタンスを徹底することで、重苦しさは消え、爽快感だけがあとに残る。
汚れを知らないルーキーと、優秀だけどワケありな先輩という、警察ものでは鉄板の組み合わせが好きな人もぜひ!
『聞いてるの? マネージャー』シナガワ
一迅社 (2018-03-24)
担当アイドル、全員オネエ。
大人気男性アイドルグループ・ヴィノジトを担当することになったマネージャーの恵比寿(通称・エビ)は、じつは彼らの大ファン。興奮を抑えられないまま訪れた楽屋でエビは知ってしまう。ヴィノジトが全員オネエであることを……。
オネエ以前に中学生レベルでバカなメンバーと、「彼女」らに振り回されるエビのハイテンションギャグなのだけれど、読み進めるうちにあることに気がつく。もしかして一番どうにかしてるの、エビなのでは?
ときにはメンバーを足蹴にし、タレント相手とは思えないような暴言を吐くこともあるエビだけれど、ヴィノジトの活動を支えようと必死だ。メンバーの素の部分には対しては友人のように接しつつも、アイドルグループとしてのヴィノジトには、いまだにファンのような深い愛情……というより狂気に近い感情を抱いている。
好きなものを近くで眺めたいし、支えたいけれど、独占したいわけじゃない。そういう「尊い」としか言えないような感情が昂ぶったあげく、変なところから吹き出してしまったような感じ。だからなのかエビの行動、セリフは、本当に予想不能で、繰り返し読んでも笑ってしまう。